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朗読会前夜の特権

2012-07-21
金曜日の夕刻というある意味での“ゴールデンタイム”に、「授業に活かす朗読講座」は設定されている。教職科目であることや教室配置の関係もあり、6限(18:15~19:45)という休み前で誘惑の多い時間帯である。もうこの時間帯になって数年になるが、むしろ心からやる気のある学生たちが履修するという“効用”を伴っている。また土曜日に朗読発表会を設定しているため、必然的に前日リハーサルができるということも好都合だ。この日は、最終リハーサル。4月6日より起算して前期15回目の金曜日6限を迎えた。

朗読そのものの完成度とともに、使用する背景映像・効果音・舞台への“出捌け”などと確認しておきたいことは山積している。そんな状況の中、各班ごとに練り上げて来た朗読のほぼ完成形が、実際の会場となる<教室>で展開される。もちろん、順調にこの時間帯を迎えられた面もあれば、未だ問題を多く抱えている面もある。各班が、これまでの話し合いや練習を通じて養って来た「表現」を集成し、ひとつの「朗読表現」を創って行く。先に筆者は、「完成形」という語彙を使用したが、「朗読表現」の場合は、どこが完成形なのかは定かではない。

この最終リハーサルで表現された朗読に対して、いくつかのアドバイスが提供されると、またその表現の機微に変化が生じて来る。もちろん、効果的な“進化”ということである。極端にいえば「朗読表現」とは、その都度「ライブ」なのであり、行われるごとに全て違うものといっても過言ではない。決まりきった型通りのものを、発表会で披露するのではなく、発表会当日は当日で、その会場の雰囲気・聴衆の反応・唐突な出来事等々によってそのあり方が左右されるといってよい。まさにこの日の最終リハでも、様々な化学反応が生じ、それまでの“過程”から大きく進化した作品が見えて来た班も多かった。

発表会同様に約3時間半のリハーサル。いくつもの試行錯誤を繰り返しながら時は瞬く間に過ぎて行った。閉門時間を過ぎ、腰に据えた鍵の音を響かせて守衛さんが教室を覗き、「お帰りは通用門を利用してください」と一声。もはや大学構内は、許可のない外部者が入れない状態となり、僕たちはさながら“オートロック”内に閉じ籠った“鼠たち”のようでもあった。その特殊な空間は、いつしか学園祭前夜作業のような気分が醸し出されてくる。その大学構内に居ることが、大変貴重な「特権」を得たかのような感覚が頭の中を支配し始める。時刻は11時に近かっただろうか。各班の状況で次第に帰宅して行った学生たちも、最後の何人かが帰路についた。

0時にあと10分。
正門前時計台のアナログが、優しく淡い光の中で針の角度を僕たちに見せている。
小雨がそぼ降る中、その「特権」空間から僕たちは巷間に放出されるかのように、
家路についた。


帰宅すると、
時刻は発表本番のほぼ12時間前となっていた。



【いよいよ本日!】
「朗読実践への提案in早稲田2012」
(早稲田大学国語教育学会研究部会「朗読の理論と実践の会」主催)
日時:2012年7月21日(土)13:00~16:30(開場12:30)
場所:早稲田大学16号館106教室
(一般公開ですので、どなたでもご覧になれます。)
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