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「野蛮」ディバイド

2012-07-17
原宿駅の古風な駅舎を夏空のもとに見上げた。やや湿気も少なく、夏にしては不思議と東京から富士山がくっきりと見える朝であった。地下鉄「明治神宮前駅」で下車し、JR原宿駅まで歩いた。明治通りの交差点には、いつものようにファッションの街・原宿を謳歌する人々が、おしゃれな服装で横断歩道を闊歩する。交差点近くの一角には、何やら有名になった飲食店に、開店前から長い列ができていた。この休日の原宿という街は、実に“平和”に“幸福”を感じる人々ばかりで溢れ返っているように見えた。

JR原宿駅で友達と待ち合わせて、駅から西側の代々木公園へと向かう。そこは前述した表参道側とは明らかに違う空気感が流れていた。友達らと出向いたのは、「さよなら原発10万人集会」の会場である。少なくともこの1年数か月の間、原発の恐怖を感じ続けてきた身として、今何をどう考えて行動すればいいのかということを、自分自身で整理する為にも、こうした場に足を運ぶことが必要不可欠であると考えてのことである。

集会の冒頭で、音楽家の坂本龍一氏が語った。
「フクシマの後に、沈黙しているのは野蛮だ。」と。

知性と教養を以ってして、この問題にどう向き合うのか。
そんな思考と行動を自ずから喚起することばであった。
更には、鎌田慧氏・内橋克人氏・大江健三郎氏・落合恵子氏・澤地久枝氏、最後に90歳になる瀬戸内寂聴氏らが、それぞれの個性的な表現で、現在の原発と社会に対する考え方を語った。炎天下の中、土のサッカー場に腰を下ろした多くの人々も、それぞれの思いを胸に、この話に聞き入った。時折舞い上がる砂埃に身を曝しながら、どんな社会を僕たちは求めたらよいのかという、“命題”に対して深く考えさせられる時間となった。群衆と砂にまみれるひと時、靴も衣服も汚れる。このような表面上のある意味で“野蛮”に直面しながら、実は奥深きことこの上なく人間の叡智について考えさせられた。

人それぞれに、様々な立場があり考え方がある。
休日を謳歌するのも、人として大切なことだ。
だが、立ち止まって今こそ考えなくてはならない。
この国が本当に幸せになるとは、どういうことかを。
僕たちは、どんな道を将来に向けて選んだらよいのかということを。

ことば・音楽・動作等々、多様な方法で個人の考え方が表現される。
中にはコミカルな寸劇で、日本の社会構造を逆説的に揶揄する人たちもいる。
その様々な、表現を生身で感じてこそ思考が前進していくはずである。

そして、このように“電気”を使用して文章を書いている自分がいる。

まさに一人一人が、他人事ではなく“当事者”なのである。

だからともに考えたい。
考えなければならない。

生きることを享受している、この日本社会において、
一つ一つの小さなことばを繋いでいかねばならない。

帰り際に、再びJR原宿駅に行くと、代々木公園を発した市民パレードが、
表参道側へと歩みを進めていた。
駅の東西に存在した、確実なディバイド。
その断層を、多くの人々の掲げる横断幕や幟が越境して行く。
改めて坂本龍一氏の述べた「野蛮」とは何かが、心の内を逡巡する。

新宿へ出て、友達とともに喉を潤しながら、
更に僕たちの未来を語り合った。
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