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俯瞰把握力と同化想像力―内村航平の強さ

2012-07-16
野球と共に僕自身が経験した競技である器械体操。決して高いレベルで競技したわけではないが、体験しているか否かが特に大きな差となって自己の中に存在しているように思われる。そんな視点から、NHKスペシャル「ミラクル・ボディ」を視ると、内村航平が体操選手としてなぜ強いかということに大変納得できた。それは、場合によっては僕が現在課題としている、「音声表現研究」においても参考になる視座があった。

内村航平の第一の強さは、「空中感覚」だという。宙返りにひねりを加えている最中に、「自分の位置やスピードがわかる」のだそうだ。0.数秒の中で周囲の景色を見ることができていて、天井と床との景色の差を瞬時に捉え、ひねりの位置を捕捉できる。よって、最後の“半ひねり”の時点で片手ずつ広げ始め「ひねりをほどく」のだという。それによって、左右にぶれがなく、両足が安定した状態で着地に入ることができ、床に突き刺さるが如き安定した着地が取れるというのだ。実に見事に自分が行っている“行為”を俯瞰でき把握しているということができよう。並の選手であれば、ひねりの位置を自己把握するなどまず不可能である。経験からいうならば、1回ひねりであっても暗中での手探り状態であったのが否めない。それが3回ひねりを難なくこなす内村の能力は、実に超人的といえる。

また第二の強さは、「1人称イメージ」ができる力だという。並の選手であれば、他者の競技映像を見た際に、「3人称イメージ」(第三者の視点からその競技を見ている立場での想像力)が働き、該当する脳の部分に反応が起きる。だが、内村の場合は、他者映像を視るだけで、「高次運動野」という脳の部分に反応があり、自身で競技をしているのに近い状態の感覚が得られるという。現に、“コバチ”という鉄棒上で宙返りをして再び鉄棒を掴む離れ業を、中学生時代に映像を繰り返し視るだけでイメージを作り、そして現実にできるようになったという逸話がある。このような「1人称イメージ」は、人並み外れた現実観察に根ざした(他者)同化想像力といえるのではないだろうか。

自分がどのような声を出して表現しているかを俯瞰し把握する力。
文学作品中の人物そのものに同化し行動しているかのように思考する想像力。
朗読をする際にも、この上なく大切な2つの力である。

「体操は“Artistic Gymnastic”といわれる。“線”が汚くては話にならない。」
僕が高校時代にお世話になった先生は、常にこのように指導してくれた。
内村は、ここに記した二つの力を背景に、実に「美しい」体操を演技する。
空中であっても、決して「膝・つま先」が曲がらず、実に綺麗な直線となっている。
この緻密さは、「体操ニッポン」といわれた時代からの伝統的な強さでもある。

今からロンドンでの内村の競技が楽しみになってきた。
今までの自分に驕ることなく、また新たな高難度の技を魅せてくれるそうだ。

朗読表現も芸術性を求めてより美しくありたいと願う。
そんな願いを、内村航平の秘密をヒントに更に追究していきたいものである。
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