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自己主張の受け止め方

2012-06-07
自分の意見を述べることに対して、「おこがましい」「さしでがましい」という感覚を、程度の差こそあれ、日本人は持っている傾向がある。とりわけ学校・職場などの公的な場では、単に意見を述べただけであるにもかかわらず、「自分勝手である」というレッテルを貼られることもある。私的な場でも例外ではない。居住する地域の人々と、面と向かって意見を述べ合うことは稀であり、親戚・家族の中でさえ遠慮して言うべきことを忌避している場合もある。これはやはり、日本社会自体が「個人で意見を述べる」ことを奨励してこなかったという歴史的経緯がありそうだ。その原因追究は、複雑かつ奥深いものであるので、本日のところは横に置いておくとする。

端的に述べれば、日本は「他人がどう思っているかを察する」社会である。「自分のこと以上に相手のことを思う」という人間愛の表われであると解すれば、長所であるといえるかもしれない。だが、「察する」ことから勘違いが生じ、「察し合う」ことの齟齬から、異常な〈空気〉が醸成され、その〈空気〉に従わないと「自分勝手」だと非難されるという負のスパイラルが、これまでの日本史上においても、様々な惨事をもたらしてきたことから、我々は学ぶべきではないだろうか。

日本人が意見をもっていない訳ではない。少なくとも、大学の授業で意見交換を行えば、学生は立派な意見を述べることができる。最近も、意見表明の練習として「ミニ意見交換」を実施した。

「消費増税法案」をどのように思うか?
「高校早期卒業制度導入」をどのように思うか?
「大学での保護者会実施」をどのように思うか?

大学生は、こうした自己の直近の生活に関わるテーマに対して、適切な意見を述べることができる。もちろん討議の練習として、自分の意見はともかくも、上記各テーマに対して「支持する」「支持しない」理由を、意見として思考し述べる練習も行った。思考の深浅はあるのだが、学生はおおむね、理由を付けて各自の意見を述べることができる。

蓋し、日本人が意見を言えない訳ではなく、学校教育の中で「意見を述べる」訓練がされていないのだ。また、身近な社会で意見を述べ合う環境作りを忌避してしまっていることが、大きな原因であるように思われる。そのためか、我慢していた意見をいざ匿名で表現するWeb上の環境では、耐え難いほどの「攻撃的な意見」が述べられ、相手の立場や人格さえもが尽く無視された状態に陥る。匿名という隠れ蓑の裏で、意見を言うことを押さえていた人々が、暴発的に無益な発言を平然と繰り返すのである。

はてまた、意見を聴くことができない人もいる。相手の立場を尊重し、敬意を払いながら意見を述べようとすると、即座に「自己主張がない」という判断を下す傾向を持つ方々が存在する。意見を述べることに対しては、実に両極端な判断が下され、そのことによって豊かな意見交換が為されずに、悶々とした中で人間関係が澱んでいる場合が多いのではないだろうか。


大学の授業で使用しているテキスト『口語表現ワークブック』(実教出版・2004第1刷)の「自分の意見を述べよう」には、次のような立場が提唱されていて有益である。

アサーティブ・コニュニケ―ション(Assertive communication)
(受動的でも攻撃的でもない第3の意見の述べ方)
「Assertive」の辞書的な意味からすると、「独断的な、強い」などとあり、「勝手な自己主張」と解しがちだが、このテキストで述べられている立場は次のようである。

「相手を攻撃せず、感情的にならず、オープンな気持ちで、相手にわかるように明確に論理的に話し、自分が勝つか負けるかではなく、双方がおたがいに納得のいく解決方法を見だそうと努力する、建設的な関係を築くことのできるコミュニケーション方法である。」

とされている。
ここに示されている全ての項目について、苦手な方が日本には多い。
あなたもすぐさま脳裏に、何人かの人々を思い浮かべることが可能であろう。


いわば、

「しっかりと自分の意見を述べながら、相手にも敬意を払い、相手を尊重しつつ行うコミュニケーション」

と位置づけられているのだ。


こんな立場を保ちつつ、身近な小さな社会の中で
様々なテーマの意見交換が為される必要性を感じる。
政治・経済・文化・社会・教育・等々。
スポーツが語られることはあっても
こうした話題を意図的に避ける傾向が社会に蔓延している。

個人が意見を述べることを忌避してはならない。

大学生とともに、授業で「自己主張」について考え練習してみて、
それは社会全体が認識を改めるべきだと自覚するのである。
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