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べらんめえ調の心意気

2012-03-17
落語には江戸っ子が豪快に啖呵を切る場面が出てくる。江戸っ子は「粋」な行動を信条としており、「宵越しの金はもたねぇ」だの言って威勢のいいところを見せて見栄を張り、その上で言い出したら引っ込みがつかなくなるような無鉄砲さを特徴とする。

「江戸っ子は皐月の鯉の吹き流し口先だけではらわたはなし」

という狂歌には江戸っ子の生態が絶妙にまとめられている。


さて、この江戸っ子言葉のことを「べらんめえ調」などと呼ぶ。元来は人を罵っていう「べらぼう」に「め」がついて「べらぼうめ!」となり、さらに音が変化して「べらんめえ」となったという。「べらぼう」がなぜ人を罵ることばであるかというと、語源として江戸時代に愚鈍なしぐさで笑いをとった役者の名前からという説。あるいは、「へら(箆)」と「ぼう(棒)」に由来するという説。いずれにしても「馬鹿者」という意味として使用されたことを由来としていて、「バカ・阿呆・愚か」といった意味となり、他人への罵声として定着して来たという。

この「べらぼうめ!」が「べらんめえ」となる音の変化にこそ、「べらんめえ調」の真髄があるような気がする。多くの語を「てめえ」「すっこんで」「やがれえ」などと「え」を付けて語尾に威勢を付ける。しかも「やがれえ」などの「え」の前のラ行音「れ」などは、舌を巻いて発音する。このあたりの語尾変化が自然にできるようになると、江戸っ子的な響きでの会話を楽しむことができる。また、促音「・・っ・・」の多用も特徴的だ。「犬を野原に放してしまった」などという時に、「犬(っち)の野郎を」「のっぱらに」「おっぱなしちまった」などという。僕の祖父は東京下町生まれだったので、幼少の頃、その生の“発音”を聞いて育ったので、僕自身もいささか「江戸言葉ネイティブ」である自負はある。舌の回りが好調になった時、心の底から怒りが込み上げて来た時、酔って調子づいた時、などには自然と「べらんめえ調」になっていると周囲の方から指摘されることがある。

この日は、金原亭馬治さんの「あのあの種の会第18章」で「大工調べ」を拝見した。大工の棟梁が「てやんで、べらぼうめ!!!」と啖呵を切るあたりが大きな見せ場である。同時に、大屋さんや与太郎の発話との変化が、演ずる立場では大変難しい噺であると痛感した。ことばが背負っている文化を、そのことばの特徴を再現することで、より効果的に噺の内容を伝える。終演後、馬治さんご自身も盛んにその出来栄えを気にしていたが、まさに落語の奥行の深さを思い知る機会であった。

時に現代は、人前で感情を表出することが憚られる世の中。

「てやんで、べらぼうめ!!!」

と啖呵を切った方が、世の人情も上手く運ぶ場合があることを、
ことばが背負う文化に教わるのである。

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