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アメリカを魅了する由紀さおりの声

2012-02-22
 由紀さおりというと、「ドリフ大爆笑」に出演してコントにも参加する、“すかしたおとぼけ”のイメージがあった。だが、その大爆笑にはコントの合間に必ず歌手が唄うコーナーが設けられていて、彼女も例外なく唄っていた。というよりその歌が妙に気になっていたのが思い出される。曲自体も他に類を見ない香りがあり、アイドルなどでは到底為し得ない歌唱力を存分に披露していた。特に僕は、その唄う際の口の動きが気になっていた。明らかに他の歌手よりも動きが大きいのである。開閉が明瞭とも言い換えられるかもしれない。下唇を基盤としながら、上唇を躍動的に可変させ様々な声のトーンを調律していると解釈すればいいのだろうか。

その僕が気になっていた口の動きに、どうやら彼女が最近、アメリカで大人気である秘密が隠されているようだ。この日、NHK「クローズアップ現代」を視ていると、「由紀さおりの世界が絶賛 日本語の歌の秘密」をやっていた。何気なく視ているうちに、冒頭に書いた「口の動き」が腑に落ちた。彼女の唄い方は、「母音」の発音を実に大切にしているというのだ。そこに「強弱」「抑揚」が存分に表現されて、「感情」「思い入れ」「美しさ」になっていると番組の取材を受けた音声研究者は分析していた。事実、音声解析装置で彼女の声紋を測定すると、普通の人では見られない波紋が大量に発生しているという驚くべき解析結果であったという取材も為されていた。

日本語は言語的にみても「母音」が多用される言語である。むしろ「母音」により全ての音韻が支えられているといった方が正しいかもしれない。その根幹となる音韻を美しく発声しようとすることは、自ずと日本語そのものを美しく響かせることに通じる。また、歌曲の中で1小節に入れられる単語が、英語に比べて少ないという特徴もある。その限られた最少語彙の一つ一つを精緻に発声することが、豊かな表現力を産み出していると番組でも伝えていた。

こうした由紀の歌唱力は、幼少の頃から「童謡」を歌い込んで、比較的素朴な日本語と誠実に向き合って来たからだという。また「童謡」に込められた世界観を、自分なりに十分に解釈し、真摯に表現しようと努めている。番組内のインタビューで彼女が語っていた。

由紀「“小さい秋”とは何ですか?」
スタッフ「・・・・・・・・・・?」
由紀「季節の移ろいですよ!何か小さくとも移り変わりを発見した歌なのよ。」

といったやり取りがあった。
こうした「童謡」に込められた「ことばの向こうにある世界」、日本文化的背景を存分に咀嚼しているがゆえ、彼女の表現力は圧倒的に高まったといってよい。

 彼女の唄を聴いたアメリカ人はこう云った。
「ことばの意味はわからないが、心に海や山が浮かんできた。」
「何か、浮世絵をみるような美しい感覚が湧き上がってきた」

 由紀さおりの大ヒット曲で、初の紅白出場を成し得た「夜明けのスキャット」という曲を、偶然聴いたアメリカのジャズピアニストが、彼女とのジョインを熱望したがため、アメリカで好評を博す契機となったという。この「ル~ル~ル~ル―」という唄い出し部分でも、もちろん「L」よりも「U」の部分が歌手としての熟練とともに強調されて来ている。たぶん、アメリカ人にも「自然現象」の映像を想起させるような音韻が潜んでいるに違いない。

 改めて由紀さおりの童謡を聴いてみたくなった。
 そこには美しい日本語を発声するための方法が潜んでいる。
 使えない英語コンプレックスに悲嘆する前に、
 日本人は自らの言語の美しさを再発見すべきではないだろうか。
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