fc2ブログ

洗練をつきつめると簡潔に

2011-10-14
 Steve Jobs氏への哀悼の意を込めたメッセージが、多方面で流れている。ただ思いを抱くだけではと思い、彼のプレゼンの秘密を分析した書物を読んだ。『The Presentation secrets of Steve Jobs』(邦題=『スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン―人を惹きつける18の法則―』(Carmine Gallo著・井口耕二訳・外村仁解説・日経BP社刊)である。

ジョブズ氏のプレゼンがなぜ人を惹きつけるのかという理由が、全体を3幕に分けて18のシーン別に分析・整理されている好著である。各幕で一番気になったタイトルを挙げると次の三つになる。

1敵役を導入する(シーン6)
2「うっそ!」な瞬間を演出する(シーン13)
3台本を捨てる(シーン17)

 「敵役を導入する」とはジョブズ氏の場合、ユーザーが問題視している点を挙げて、それをアップルの製品なら瞬時に解決すると告げる手法である。「敵役(問題)を登場させると、聴衆が主人公(解決策)を応援したくなるという古典的物語手法だ」という。

「「うっそ!」な瞬間を演出する」とは、美しく感動的で記憶に残る瞬間をプレゼンに織り込むということ。例えば、マックブックエアーを茶封筒の中から取り出すような演出である。

「台本を捨てる」は、文字通りプレゼンをメモなしで行う。「話を承るのではなく、対話を望む21世紀の聴衆にとってスティーブ・ジョブズほど完成されたプレゼンテーターはいないといえる。」ということ。プレゼンに対して練習に練習を重ねた結果、聴衆とのアイコンタクトを重視した人間的な訴えになる。「スライドの映像をヒントとして、主なメッセージを1スライド1テーマという形で話してゆく。」ということだ。


 他にも気になる点は多々あったが、全体として「洗練をつきつめると簡潔になる」(レオナルド=ダビンチの言葉を引用しジョブズ氏が語った言葉)という境地に到達するということであろう。「アインシュタインの簡素性理論=簡にして要の説明ができないのは、十分に理解できていないからだ。」も同書には引用されていた。同時に、聴衆が記憶に残る瞬間を演出するには、「脳内にドーパミンを放出」させる必要があるという。「退屈なものに脳は注意を払わず、心に訴えてくるものには注意を払う」という認知学の専門家・ジョン・メディナ氏の弁も引用されている。要するに、「ドーパミンは、『これを覚えろ!』と書かれたポスト・イットのようなもの」だというのである。プレゼンに限らず、学校や家庭の教育現場でも心得ておきたい一つの法則である。

 ジョブズ氏のプレゼンにおけるヘッドラインも、「簡潔・具体的・メリット」が必ず込められている。「1000曲をポケットに」は、言わずと知れたipod発表の際のヘッドラインである。これは真逆なプレゼンを想起すれば、誰でも容易に理解できる。「冗長・抽象的・デメリット」=喩えるならば、学校で校長が朝礼において校則に関する訓示を行っている光景を思い起こせばよいだろう。

 最後に、同書に書かれていた、ジョブズ氏が奇才を発揮した人物であることを語る言葉を引用しておこう。



 「自分はおかしいんじゃないかと思う瞬間が人にはある。その異常こそ天賦の才の表れなんだ。そういう人のために僕らは製品を作っている。」



 「そういう人」はまさにジョブズ氏自身を指すかのようだ。
 彼は自身の情熱に従い大好きなことをしてきたのである。

 黒タートルにジーンズと白いスニーカーで驚異的なプレゼンができるのは、「天賦の才」なくしては無理。誰でも一朝一夕にできるものではない。


「聴衆を魅了することにかけては世界一のコミュニケーター」=Steve Jobs

 今後も、膨大なYou Tube画像も参考にしながら、そのコミュニケーションのあり様を、本格的に分析してみようかと思う。
関連記事
スポンサーサイト



tag :
コメント:












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック:
トラックバック URL:

http://inspire2011.blog.fc2.com/tb.php/712-2925897c

<< topページへこのページの先頭へ >>