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「サラダ記念日」の奥行

2011-07-07
 個人的な記念日を多くの人が覚えていてくれたら、どんなにか嬉しいことだろう。そして、そんな個人的な記念日が1年間で何日あるだろうか?誕生日は特別だとしても、その他に記念日を持っているということ自体に、人生を美しく生きる秘訣があるようにも思う。

 この日のTweetでいくつか見られた「サラダ記念日」のことば。「7月6日はサラダ記念日」という、短歌の下の句が韻律よろしく響くので、何となく身体のどこかに保存されている。もともと、俵万智氏の個人的な恋人との記念日なのだろうが、それを世間の多くの人が「サラダ記念日」だと覚えている。まさに歌人冥利に尽きるということだろう。

 以前に短歌の番組で、俵氏がこの歌の制作秘話を語っていた。本当は「サラダ」ではなく「唐揚げ」を作ったのだそうだ。よくよく考えてみれば、サラダで「味がいい」というのも、結構言い難いものだ。ドレッシングからしてオリジナルで作ればということだろうが、味に大きな差が出るには、プロ級の料理の腕前ということになるだろう。やはり「唐揚げ」の方に必然性があるような気がする。

 だが「カラアゲ(唐揚げ)記念日」というのも、韻律的にも文字列的にも短歌の中にある語彙として馴染みにくい。だいたいにして「字余り」を生じさせてしまう。そこで登場した「サラダ」という語彙。全てが「ア段音」であり三文字に「濁音」が加わると妙に高級な響きとなる。

 たぶん「7月6日」というのも真実か否か。「七夕」1日前という印象深さ。「しちがつむいか」という韻律の響き。あとに添えた助詞「は」が、敢えて1字分の「字余り」となりこの記念日の日付を強調する。むしろ韻律等にこだわった短歌としての使用語彙として考えた方が、納得した分析ができるのかもしれない。


 俵氏には特別な思いがある。大学で同じ専攻の先輩であった。もちろん、学生時代は有名であったわけではないから、ただの地味目の女子の先輩としての記憶しかない。目を掛けてくれていた男子の先輩の同級生という程度にしか思っていなかった。

 ところが、後になって大変親しい先輩が、彼女と交際していたということがわかった。ということは、「サラダ記念日」の短歌で「この味がいいね」と言った人。「嫁さんになれよだなんて缶チューハイ1本で言ってしまっていいの」という短歌において、酒の勢いでプロポーズした人が親しい先輩であったとわかり、実にリアルに俵氏の短歌を鑑賞できるようになった。

 もちろん親しい先輩は、俵氏とゴールインというわけにはいかなかったので、甘い歌を創作する青春の日々の題材となっただけだったのかもしれないが。


 創作者の体験と虚構を掘り返してみると、様々な奥行が見えてくる。

 やはりことばの力は偉大であり、人間の生き様に色とりどりの花を添える。

 そんな言葉に敏感な人生でありたいとも思う。
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