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泣ける「読み聞かせ」

2011-06-18
 「読み聞かせ」というと、幼児に対して大人が行う行為であると一般的には考えられている。しかし実は「読み聞かせ」は年齢を問わない。老人とか大人であっても十分に楽しめ、精神を癒される効用がある。落合恵子さんの『絵本処方箋』(朝日新聞出版2010年)などにも、大人向けに「自分の弱さに腹が立ったら」といったテーマに沿って、秀逸な絵本がコメントつきで紹介されている。

 絵本の世界は、基本的に虚構により構成されている場合が多い。動物が主人公となる場合や、おとぎの国のような仮想の世界が存在し、そこで起こる不思議な体験に心をときめかせることも多い。その虚構を体験することで、現実にある人間の精神が様々な角度から癒されるのである。現実の世界から一瞬でも逃避できる時間があることで、気持ちに余裕が生まれるからであろう。

 大学生をグループに分けて、絵本の「読み聞かせ」発表を行った。題材とした絵本は、『ごんぎつね』『かもさんおとおり』『おじいちゃんがおばけになったわけ』『かさじぞう』である。中でも「おじいちゃんがおばけになったわけ」が発表された後に、聞いていて涙する学生がいた。心への浸透度が非常に高かった証拠であろう。

「おじいちゃんがおばけになったわけ」は、孫が祖父の死に直面し葬儀などに臨むが、その夜からこの孫の前に「おじいちゃん」の「おばけ」が現れる。そして祖父は孫を連れて自分の人生を振り返りつつ、様々な場所を彷徨する。まさに祖父はこの世に未練を残した「おばけ」なのであるが、この幻想の中で生まれる祖父と孫の心の交流に深く心を打たれる。最終的に祖父は消えていくという結末になるのだが、その瞬間、孫が祖父の死を受け入れることができたのだと読者も気付く。

 死に直面し、それを周囲が受け入れていくことさえも容易でなくなった現代社会。そんな現代に、この小さな絵本が運ぶ心温まる世界は何ともいえない気持ちにさせられる。孫が出会った「おじいちゃんおばけ」は、もちろん虚構であるだろうが、そのような想像を働かせることこそ、我々人間にとって必要な精神性なのではないかと思う。


「読み聞かせ」は一人一人の聞き手への語り掛けである。

 一人の学生が涙したというだけで、この発表は授業として大変意味があったということになるだろう。

 ライブ感ある「読み聞かせ」の成せる業である。
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