それ行け!!Going Going
2011-03-23
22日(火)11日の震災以来暫くの間、音楽の美しさを忘れていた。余震や原発への不安に怯え、TV報道やWebの情報などを睨みつつ、悲痛な思いを先行させて過ごしていたような気がする。この日、眠っていると、ふと夢うつつにあるメロディーが脳裏に流れた。エレキギターの軽妙な調べが心の中で踊ったのだ。そのイントロの延長上には、麗しくも逞しい歌詞が息づいていた。「適当に手を抜いて行こうな
真面目に好きなようにやんな
我行く旅の道中は予期せぬことばかり
歩みを止めたきゃ言いな
悩み多き時こそ笑いな
我が胸の奥の葛藤や身を切るような絶望も Oh,yeah
すべてを背負(しょ)いながら生きるは重たかろう!?
吹く風に押され身体預けて
それ行け!!Going Going
追い風 Blowing Blowing
それ行け!! 男の子(ベイビー)!!
Wow・・・ ファイト!! 」
桑田佳祐最新アルバム「MUSICMAN」に収録された、「それ行けベイビー!!」である。桑田自身がガイドの中で吐露しているが、「エレキの弾き語りという曲作りを試した」というのだ。そのヒントは2007年ソロツアーのアンコールで、一人でステージに残り、「希望の轍」をエレキソロで歌い、「ラフだしアバウトな感じでいいな」と思ったからだという。その挑戦的な試みに、桑田作詞の歌詞がものの見事に調和し、現代における自分応援歌的な味わいを醸し出している。
最初にアルバムで聞いた時は、エレキの曲調だけが気になって、サビ部分の3声によるハモリなど、曲の流れに魅せられていた。ところが、歌詞カードを読んでみると、その歌詞の軽妙でありながら、生きることの真実を捉えるような掴みが堪らなく心に響いてきた。あっ! この流れはやはり今までサザンの曲に魅せられる時の段階的なパターンであることに気付いた。
すると、この曲が自らの身体と感性の両方に浸透した瞬間が来た。
「適当に手を抜いて行こうな
ボチボチ好きなようにやんな
終わりなき旅の道中は予期せぬことばかり Oh,yeah
命をありがとネ
いろいろあるけどネ
それなのに明日も知らぬそぶりで
それ行け!!Going Going
追い風 Blowing Blowing
それ行け!! ボク!!
Wow・・・ ファイト!! 」
「命をありがとうネ」の歌詞は、桑田が闘病生活前に書いたというが、それが後になって、自身の境遇に嵌(はま)り過ぎるほど嵌るあたりは、自己の人生を予見していく桑田の超能力的な感性のように思えてきたりもする。
そしてこの歌詞の中で桑田が、一番言いたかったフレーズが「真面目に好きなようにやんな」だという。ガイドの中では、「人間は所詮、不完全なものだから、あまり一生懸命やって煮詰まってしまってもつまらない、適当に手を抜いてやってみるのもいいんじゃない」と桑田は語る。
震災から10日以上が経過した今、新たな世界観の中で前進すべき日本人一人一人に向けて、こんな軽妙なエレキの弾き語りが、背中を押してくれるはずだ。その曲を、病魔の恐怖に立ち向かった桑田が熱唱するという図。これはもうファンとしては堪らない快感だ。
ぜひ多くの人にお聞き願いたい一曲である。
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