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不謹慎の効用

2011-03-16
15日(火)本日から会社も自宅勤務。交通の混乱を鑑みた措置である。家で福島原発の状況をTV等で見ながら、何かと思索に耽りながらの時間が過ぎゆく。平行して書斎本棚の片づけに追われる。書棚扉の破壊により散乱している硝子が、その進捗を妨げる。その間に朝食・昼食は家にあるもので済ませた。それもさして日常と変化のない朝昼食である。

 独りの部屋、倒れた本棚、使えない書斎、原発事故の不安な報道、Web上の情報収集等々。このような環境に身を置いていると、次第に時間や対人感覚を失ってくる。家族が同居していればまだしも、独り暮らしの孤立感とはこのようなことを言うのだろう。

 東京の巷間では、スーパーなどでの食糧買占め、燃料の買い占めなどの状況が顕著に見られるようだ。自宅に籠りつつ、事の推移を見守る為に各家庭が採った防衛策ということであろうか。先日来、小欄に書いているように、小生は特に食料を買い込む必要性を感じていない。非常事態には日頃から常備した緊急食糧が部屋にあるからである。そんな状況を思索していると、次第に会社の自宅勤務などの状況に対して疑問が生じて来た。人々が家に籠る環境を、首都東京で実行していていいものだろうかと?

 社会的に大きな枠で語るならば、経済活動の鈍化に対する懸念である。スーパー・コンビニの食糧があれほどなくなっているのだから、多くの人が家で食事をしているのであろう。そうなると外食産業が苦しい状況に陥ってしまうはずだ。勿論、娯楽施設などで電気を大量消費するものが休止しているのはやむを得ない。だが、首都圏全体における経済活動の停滞は、果たして被災地の為にもプラスな材料なのかどうかと思ってしまう。いわゆる「自粛」ムードに対しては、功罪両面を考え適所においての実施が妥当なのではないかという考えに至った。

 夕方から、毎週火曜日に夕食をとる馴染みの洋食屋さんへ。行く前に電話を入れると、元気な奥さんの声「もちろん営業してますよ~!」。店まで徒歩で約25分、敢えて電車は使用しなかった。常連である懇意になった老人も、すでにいつもの席にいらしていた。店主夫妻・息子さん共々、皆が元気な顔であるのを見ると、何だが嬉しくなってきてしまった。次第にお店もお客さんが増える。隣に座った見知らぬ男性も、夕刊を見ながら「原発は大丈夫なんですかね?」と疑問を投げかけてくる。小さな経済活動かもしれないが、この洋食屋さんで、温かい人と人とのふれあいを通じて、精神が少々回復して来たのを感じた。この日は、夕食後に英会話教室もないので、ワインをいただきながら美味しいい洋食と、しばしの談笑を楽しんだ。

 約2時間後に、老人も帰宅の途に就いた。小生も店を出たが、アルコールを飲んだせいもあり、馴染みのワインバーが気になった。昨日連絡を取って、お店のワイングラスの破損などの被害は避けられたと聞いていた。どうせ外出したのだから、もう1軒にぜひとも立ち寄りたくなった。店までの地下鉄ルートは、健全に運行されている。迷わず地下鉄入り口の階段を下りた。

 店に着くと、先週もお会いした常連さんが数人カウンターで談笑していた。小生もその間に入れてもらい、美味しいワインと心和む話に参加させてもらった。酒を飲み談笑するというのが、この機において「不謹慎」かどうかといった観点が、頭のどこかにあったが、先週11日以来の膠着した精神を解放するには、実にありがたい時間であった。自然と酒の力も相俟って、(この発言は)「不謹慎かな?」というような内容も語られる。しかし、人が語り合い何かを考えるという空間が、確実にそこにあった。

 そんな時間を過ごしていると、また揺れを感じる。店主がグラスを背後にしたカウンターからこちら側に移動する。すぐさま各自が携帯などで情報収集。どうやら震源は静岡東部らしい。その時は、今までにない緊張感が走った。とうとう東海地震の巣も連動してしまったのかという懸念である。地震列島はどこまで連鎖をしていくのか。

 しばらくすると、また平穏が訪れた。カウンターの隅にいた別のお客さんと少々会話をすると、どうやらだいぶ前からお互いTwitterでフォローしていた間柄だと判明。こんなリアルで偶然な出会いがあるから面白い。

 その後も、深夜まで小生を含めて3人の常連さんで音楽の話など。このワインバーでの夜が、精神の閉塞感を打破してくれた。



 薄暗い地下鉄の駅、消された店舗看板の電灯。それはその薄暗さで十分である。しかし、人間同士のふれあいという灯は、常に最大限明るくありたいと思う夜であった。



 2軒のお店で過ごした夜。それは「不謹慎」といえるのだろうか?

 たとえ当てはまったとしても、「不謹慎」にも社会的効用があるはずである。
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