将棋崩し・積木崩し
2023-10-27
積み上げた将棋の駒を音を立てずに盤外へ不良少女となった娘との200日間の葛藤描いた80年代作品
一つ一つを積み上げて崩れかけても望みを繋いで
小学校低中学年の頃まで、実家近くの商店街に2人の友だちがいてよくその家に遊びに行っていた。一人は裁縫店、もう一人は電気工事店で商店街の一角にそれぞれの家があった。車の交通量も多いため家の中で遊ぶことが多く、将棋や『百人一首』などを教えてもらう場でもあった。それぞれ本道の興じ方ではなく、「将棋崩し」とか「坊主めくり」をやるのが年齢的にもっぱらだった。「将棋崩し」とは盤上に山積みにした将棋の駒を音を立てずに指一本で盤外まで運ぶもので、多く駒を獲得できたものが勝ちとなる遊びだ。比較的大きい駒は運びやすく、大抵が「歩」の駒を運ぶ際に崩れる音が立ってしまうのが印象的だった。物事は大局が上手く運んでも、細部で問題が生じることがある。人生のささやかな学びが、そこにはあったと今にして思い返せる。
また70年代後半から80年代には、世相の影響か「不良」をテーマにしたドラマが盛んに制作されていた。『3年B組金八先生』などがその代表格だが、家庭内の親子の葛藤を描いたのが俳優・穂積隆信原作の『積木崩し』である。不良となってしまった娘に父親がいかに向き合うか、その姿はまさに小さな積木を重ねるようで、重ねて望みが出たと思うと些細なことで積み木は尽く崩れてしまう。もちろん崩すのはいとも簡単だが、積み上げるのは容易ではない。だが人はどんなに崩れやすい積木でも、今日の一つを積み上げるしかない。そして積み上げても細部が音を立てて崩れるかもしれないが、決して望みを捨てずに積み続けるしかない。肝心なのは「今日の一歩」である。将棋の基本もまさに一つの「歩」ではないか。連勝を続ける藤井聡太さんでも、最初の「歩」を慎重に打つことから全てが始まっている印象がある。人生を歩めば様々な音が聞こえてくる。それに囚われて悲観することなく「今日の一歩」を打つのである。
予想もしない箇所から音が聞こえる
焦らず目を逸らさず山を積み続ける
やがて必ずや「歩」によって到達点が見えてくるものである。
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