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『万葉集』の音楽

2023-10-13
「多摩川にさらす手作りさらさらに何そこの児のここだ愛しき」(東歌)
「なんと!その娘のこんなに愛しいの!」を導く音楽性
曲におけるサビのようなくり返しと耳に付く効果

担当する教職大学院科目のオムニバス担当期間が始まった。主に「和歌短歌教材」における小中学校での扱い方を考える内容だ。受講者は現職教員の院生が多く、こちらとしてもどのような意識で日頃の授業を構想・実践しているかなど学びの多い時間になる。この日は、なるべく素朴な問いを発し受講者の問題意識を喚起することを目指した。その中でやはり教員自身が和歌短歌教材の魅力を十分に掴んでいないのでは?という課題意識が浮上してきた。例えば、冒頭に記した『万葉集』の東歌は、どんな素晴らしさがあるのか?なかなか理解が不十分だというのだ。当該歌は中学校3年教科書に掲載され、簡単な現代語訳も添えてある。あくまで「意味」を深く考えようとすると「その娘が愛しい!」という程度で拍子抜けするといった意識である。だが当該歌の上の句では「多摩川にさらす布もさらさら(清々と)している」と清らかな水の流れに布をさらすという実景が浮かび、そのイメージが音楽のサビのように機能して「娘」の清らかさや「愛しさ」に重なっていくのである。まさに一首の音楽性を楽しみたい歌である。

午後一番は学部2年次配当「文学史Ⅱ」の講義。こちらでは中学校教材『万葉・古今・新古今』において採録歌数が、「万葉9首」に対して「古今3首・新古今3首」という編集上の偏りがなぜ生じているのかを考えてもらった。多くの学生から出た意見は、『万葉集』の素朴で意味がわかりやすい歌により、中学生が古典和歌に親しむ教材として有意義だというものだった。確かに前述のように簡易な現代語訳が付してある中学校教科書で、『万葉集』では訳が不要と思えるほど内容が理解しやすい。それに対して『古今・新古今』では「現代語訳を読んでも当該歌の理解は十分になされない」という意見が多く出された。もちろん元の歌集の収録歌数も『万葉』が約4500首と圧倒的に多いので、その配分比率が考慮されているという考え方もできる。(という理由だと『古今』『新古今』の同歌数が説明できないが)さらに『万葉集』という歌集が明治期になってから「国民的歌集」として仕立て上げられてきたという「近現代国家建設」の一翼を担う上で極端に尊重されたという歴史的な事実を紹介した。いずれにしても教員を目指す学部生が、この教材に和歌短歌の生命である音楽性も感得し、将来は豊かな授業を中学校で展開することを願いつつ講義を結んだ。

あらためて短歌の音楽性を考える
文章を書くときも音とリズムとサビのような効果を
「国語でなぜ音読するのか?」という根本的な理由を現代人は忘れている。


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