言わないから強烈に意識される詩歌
2023-10-02
「見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ」(藤原定家)敢えてライブにて歌わない曲があって
「自分のいない世の中 思いやるよな人であれと」(『Relay〜杜の詩』サザンオールスターズ)
歌会の中で「結論を自分で言ってしまっている歌だ」という批評がなされることがある。僕の中ではなんとなく寅さんの「それを言っちゃあ〜おしめぇ〜よ」が心に響いてくる。この批評の趣旨は、「読者に想像していただき『結論』を読み取る表現にせよ」ということだ。世間では「論理的思考」などと標榜した欧米型思考の方法が席巻するが、「結論を先に言え」は全く日本型詩歌に逆行する発想になる。「言わないことこそ大きな声で伝わる」という発想の典型的な例が冒頭に掲げた藤原定家の一首である。「見渡すと(あまりに見事な)桜の花も紅葉も無いんだよね〜」と「無い」と言うことで、圧倒的な残像現象を巻き起こし読者の脳裏に「満開の桜」とか「深く色付いた紅葉」を印象付けることに成功し、下の句の「浦の苫屋」というやや粗末な感じを受ける光景がこれまた圧倒的な「秋の夕暮れ」の美しさに映える光景と響き合うのである。
「サザンオールスターズ茅ヶ崎ライブ2023」のライブビューイングを、宮崎の映画館で観た。何と全国で10万人の観客が約280もの映画館で、このライブ映像に心を委ねたのだと云う。今回の茅ヶ崎ライブは市民球場が会場のため、1回のライブ収容人数は1万8千程度とされている、それが「4days」設定されたので現地で観られるのが単純に「7万2千人」という訳で、諸々の情報では倍率が23倍程度(日付曜日の条件によって差はある)とされている。SNS上でも「チケットハズレ全滅」というような落胆の声が広がった。その為に急遽、ライブビューイングが後半2日間だけ設定されたわけである。コロナ禍によってWeb配信の技術が格段に高まった印象があるが、サザン(桑田佳祐さんソロを含み)関係でも配信のみのライブを横浜アリーナやブルーノート東京にて開催したこともあり、方法として事務所スタッフも長けているという条件もあったのだろう。この夜は茅ヶ崎の熱気を、宮崎の映画館のスクリーンを通しても十分に感じ取ることができた。この茅ヶ崎ライブを目指し、今年サザンが発表した新曲が3曲ある。そのうち冒頭に記した「杜の詩」は社会的な話題にもなる大切な曲だ。だがライブでは最後まで演奏されることはなく、メンバーが全て退場した後に会場のスクリーンに「MV(ミュージックビデオ)」にエンドロールという形で流された。(公式発表のセットリストにはあり)もちろんライブのそれぞれの曲もよかったのだが、この手法こそが「見渡せば花も紅葉もなかりけり」なのだと、僕はたぶん10万人の中で僕しか感じないことを悟り心の中で大粒の涙がこぼれたのであった。
(10万人×2日間=20万人)+7万2千人(4日間現地)=27万2千人
僕の人生に不可欠なサザンがまた大きなうねりを作り出してくれた
表現者の追究はいつまでも何処までも果てしないのである!
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