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VIVANTー『和解』『美味しんぼ』父子対決の図式

2023-09-11
若山牧水も抱いていた母と父への思いの違い
志賀直哉の小説『和解』・原作:雁屋徹『美味しんぼ』
そして『VIVANT』父子対決の果てに・・・

堺雅人さん主演・TVドラマ「VIVANT」が佳境を迎えている。一昨日の特別公開講座においても、堺さんの高校時代の恩師・伊藤一彦先生からこの話題にも言及された。若山牧水との関係でいえば、家業であった医師を継がずに故郷を離れて東京で生活もなかなか安定しない文学の道を選んだ牧水の生き方において、父子の確執が無いわけはない。「牧水」という歌人名には「母・マキ」の名を背負うほどであった母への深い愛情に比べ、尊敬はしていたものの「山師」的な行動で散財した父とは確執がなかったわけではないだろう。特に歌集『みなかみ』収載歌に含まれる故郷・坪谷での破調歌の数々には、父の危篤や死に伴う葛藤・苦悩を含めて「父子」の関係性の図式を深く考えさせられる。明治時代以降、家業を継ぐ継がないという問題は次第に緩和されて来た社会ではあるが、牧水のように父の生き方から大きく転換するのには予想外の苦悩があるものだ。

公開講座でも指摘したが近現代における「父子対決」の図式は、志賀直哉『和解』が私小説として潔く描いている。基本線として父との長きにわたる「不和」と、一気に訪れる「和解」という流れがある。これは1980年代に流行した名作グルメ漫画『美味しんぼ』の図式が同様であることは、よく僕らが学生時代に話題にしていたことだ。「父子対決」には父子相互の妻への愛情が微妙な影を落とす。母を思い子は父の愛情の深浅について知ることで、また子は自らの妻と母との関係により、三角関係的な対立になる。これはさらに言えば『源氏物語』で描かれる継母への恋慕の情という図式が想起され、子は父を超越するという要因を持つことを心理学ではギリシャ神話になぞらえて「エディプスコンプレックス」と呼んでいる。さて「VIVANT」では一気に「和解」となるのかと思いきや、という複雑な展開となった。父子関係のみならず、世界で巻き起こる宗教・民族間対立に伴うテロリズムの問題、紛争と難民の問題、「国」への帰属意識の問題、そして家族間の愛情の問題、堺雅人さんの好演にも支えられ次週の最終回に向けて、目が離せない展開である。

自分というものが「何者」であるか?
一生という旅で解き明かしていくのが人生か
自らにも当てはめて誰しもが深く考えるべき問題をこのドラマは投げかけている。


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