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幾春かけて老いゆかんー公開記念若手歌人トークイベント

2023-08-07
「身に水流の音ひびくなり」
自立するわが身への凝視と日本文化の象徴たる「さくら花」
限りなく優しく限りなく厳しく

歌人・馬場あき子さんは、昭和3年1月28日生まれ。若山牧水が昭和3年9月17日没なので、約8ヶ月の時間をこの世で共有している。短歌1300年の歴史に「伝承者」のリレーがあるとすれば、馬場先生は牧水から「バトンを受け継いだ」存在なのかもしれない。あくなき歌への追究、妙なる響きを詠う、生への慈しみと厳しさと。「リレー」とは同系統の走りを受け継ぐことではなく、自分なりのスタイルで「三十一文字の形式」に向き合うことだろう。この度、標記の映画を観てつくづく歌人の生き方の豊かさをあらためて思い知った。また馬場先生は、能を学び舞い続けてきたことが短歌表現の奥行きとなっていることも確かめられた。現在御歳95歳、93歳から94歳にかけて撮影されたドキュメンタリー映画には、一瞬も見逃せない精緻な馬場先生の眼差しがあった。

全国の様々な映画館で上映されている映画であるが、「若手歌人トークショー」を行なったのは宮崎キネマ館ぐらいだろう。宮崎大学短歌会の学生と県内の高校生たちが、馬場先生の好きな歌を選び、また自選3首の歌を披露しトークをくり広げた。最後にはサプライズ企画で、馬場先生ご自身から若手歌人へのビデオメッセージまでが披露された。馬場先生と映画の視聴者が短歌を通じて「対話的なリレー」を行なったのも全国広しといえど、宮崎ぐらいであろう。馬場先生はかつて「若山牧水賞選考委員」もされており、年に2度は宮崎に足を運ばれていた。そのような機会に僕自身もお話をさせていただく幸運な機会を持てた。特に2018年11月の「若山牧水全国顕彰大会(群馬県みなかみ町開催)」の宴席では、大変にご丁寧に研究の方向性を示唆するお話を伺ったのが思い出される。能のみならず古典への深い造詣を活かした詠歌、またその鋭い視点に学ぶものは計り知れない。今でも大変にお元気で和服で背筋もピンと立て凛として歩む、その歩調のリズムはそのまま馬場先生の韻律の良い歌を生み出す原動力なのだろう。まさに牧水の短歌に身体的な歩むリズムが乗り移るのと同質なものが感じられた。

そしてまたユーモアと可愛らしさを失わない
あらためて馬場先生の短歌に学びたい
会場は満席、映画を柱にした文化的対話機会として貴重な時間でもあった。


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