子供心ー中原中也の初期短歌から
2023-06-02
「菓子くれと母のたもとにせがみつくその子供心にもなりてみたけれ」詩が有名な中原中也だが
初期は短歌からスタートしている
今週は毎日、ゼミ4年生の教育実習視察が午前中。トンボ帰りで会議や講義に臨み、合間の時間にメールなどの実務と隙間のない日々を送っている。それでもゼミ生たちが教壇で生き生きと授業をする姿を観て、さらには自分が求めたいテーマを含み込んだ指導に挑戦していることは僕自身をたいそう励ましてくれる。もちろん実習校の校長をはじめ先生方が、温かく受け入れていただいていると実感できることも忙しさを癒してくれる大きな要素である。抱く思いとして、宮崎県の将来を支える教員を現場の学校と大学とが手を携えて育てていることが感じられるよう、僕ら大学教員も向き合うことが肝要だと思う。という状況の中、この日も慌ただしい時間が過ぎ去り、最終コマ17:00から設定されているゼミのために附属図書館へ向かった。
前述のように4年生が実習中のため、3年生のみで自らが面白いと感じるテーマを掘り起こす対話の時間としている。この日は特に具体的な作品を取り上げて、自分が何を探究したいかを述べることとした。提示された作品は、和歌と『源氏』の女君のイメージの比較、中原中也の初期短歌、さらに中原中也の「月夜の浜辺」などをゼミ生が提供してくれた。いずれも僕自身が文学として興味深いもので、あらためて教員養成系学部でありつつ「内容学(文学)研究」こそが重要であることを思い出させてくれた。明治40年4月29日生まれ、昭和12年10月22日没、30歳の若さでこの世を去った中也の言葉には、現代の我々にも深く響くものがある。宮崎出身の詩人・高森文夫とも交流があり宮崎を訪れている。その詩は広く知られているが、中也の文芸表現の出発が12歳頃から「短歌」であることはあまり語られる機会が少ない。当時の人気歌人であった牧水・啄木の影響もあり、「さびし」「かなし」の語も多く見出すことができる。冒頭に記した「子供心」とする一首、母への思い、弟たちの夭逝、様々な思いをゼミ生たちと掘り起こすことができた。
「命なき石の悲しさよければころがりまた止まるのみ」
文学こそ深く人を愛し他者の気持ちを考える、教育としての要素が
いつもゼミ生たちの「生きる」に支えられている。
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