ほったんかけたかーほととぎすの初音
2023-05-25
春うぐいす、夏ほととぎす「田長」として田植え時期を知らせるとも
牧水が好きだった鳥として
若山牧水の鳥の歌に関する評論を書くため諸資料を読んだので、自らの鳥への興味を掻き立てられた。現在の朝の連続テレビ小説では、日本の植物学の父・牧野富太郎がモデルとなっている。幼少の頃から学校の勉強よりも植物を調べることが大好きで、小学校中退ながら当時の東京帝国大学植物学教室に出入りが許され、教授とともに研究に取り組もうとする過程が描かれている。藩閥の権威主義的な名残も色濃い当時の日本唯一の大学では、助教授や一部の学生らが職階や出身だけをかさにきて彼に対して妬みをもった接し方が甚だしい。だが学問というのは「権威・出自」ではなく、「造り酒屋の息子」であっても向き合う姿勢が大道を成すものと考えさせられる内容だ。どれほど対象にしたい存在に対し、同化し愛好し夢中になれるか?「研究」の原点とは、こうした姿勢に他ならない。
話は迂遠したが、牧水のように鳥が鳴く音で認識できたらとても素敵だと思うようになった。牧水を研究するからには、牧水の感覚そのものに迫りたいと「牧野」の姿勢を見習いたいと思う。幸い現在はWeb上に豊富な資料があり、検索すると「鳥百科」なるサイトが運営されていて鳥の特徴や鳴き声までを知ることができる。以前より小欄に記して来たが、現在の自宅周辺には今現在も鳥の鳴く音が絶えない。多くは雀なのだが時折、違った鳥の声が聞こえることも少なくない。お目当の鳥としてその鳴く音をWebサイトで予習していたこともあるが、昨日は小欄を執筆中に「ほととぎす」の初音を聞いた。そして、大学研究室でもまた聴くことができた。情報通り渡来初期には昼夜を問わず鳴き、まさに夏の到来を告げる鳥なのであった。古来からその鳴き声を様々なオノマトペ(擬音語)で表現して来たわけだが、「ほったんかけたか」というのが多くの地方の方言にあるようだ。「八音四拍」まさに短歌の「七音分」と同じ拍節である。鳥の囀りの響きは、僕たち人間にどんな影響を与えて来たのかと興味が広がった。
「ほととぎす鳴くや皐月のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな」
(『古今和歌集』恋歌一巻頭歌)
今もまた違う鳥の鳴く音が聞こえた、新たなあの友は何鳥なのだろう?
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