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水仙のこころーお彼岸入りにして

2023-03-19
庭の叢に咲く水仙たちの立ち並び
黄色の口先で何を語り掛けているのか?
春の雨風に前のめりに倒れるその姿

自宅の近所を見回しても春の気配が次第に深まっている。数軒向かいの家の樹木には鳥たちの飛来が盛んで、その待機場所のように我が家の屋根にも雀たちが元気に飛び跳ねる姿が爽やかだ。また先週の深夜には赤ん坊のような鳴き声が深夜に響いてきて、よく聞くと猫の鳴き声だとわかった。早朝に小欄を書いている時にも同様に鳴いていて、春の発情期なのだと「人間」として知らされる思いである。また庭の叢には、水仙が行儀よく並んで盛んに花を咲かせている。昨秋ぐらいに義母がうまく球根を揃えて植え直してくれた成果が、こうして春先に顕れてくる。花芯を取り巻き黄色ともオレンジとも言えぬ美しい色をつけ、その周辺の花びらの純白さを引き立てている。春の盛んな生命の営みには、人間としても勇気付け励まされるような思いである。

「花に嵐の喩えもあるぞ、サヨナラだけが人生だ」とは井伏鱒二の漢詩翻訳詩として有名である。春に花が咲けば皮肉なことに雨風が嵐のように襲い、その花を無情にも散らしていく。「出逢い」があれば必ず「サヨナラの別れ」があるものだ。一昨日からの雨で庭の水仙のうち何本かが、顔から前のめりのような姿勢で地べたに倒れ込んでいた。だが、彼らの力はこれで終わりではない。それらを切り花として妻が活かし、お彼岸入りの実家へと届けることにした。水仙の清廉さが義父の眠る仏壇の前を華やかにし、僕らの彼岸への思いを繋いでくれるかのようであった。「前のめり」というと野球漫画の傑作『巨人の星』で主人公・飛雄馬の父・一徹が坂本龍馬の言葉として「死ぬときは前のめりに」をよく言い聞かせていた。「生きる」ことの真の意味を、春先の水仙に教わる彼岸入りである。

春は人間も芽吹く時節にして
体調の変化に諸々の注意が必要だろう
四季があり暖かくなることの意味を噛み締めつつ


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