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既に「異次元」だったのではないか?

2023-01-20
「異次元の少子化対策」という言い方
「教育」にかける国家予算はOECDの中でも
保育士の待遇や環境に顕著だが「学校」においても「異次元」な人数を

かつて東京で日本酒蔵の逸品を味わう会という催しに参加した際に、日米をまたにかけて活躍するソムリエの方と出会ったことがある。彼女のプロ意識は高く、まさに自由競争の中で富裕化した層を対象に日本酒を吟味し提供するような場で活躍していた。米国などでも日本酒や日本食への嗜好は高まり、「すし」などと同様に「うまみ」などの日本語が汎用化し高級和食レストランなどが活況であった。ある意味で「自由競争」を旨とする新自由主義の権化のような考え方で、料理や日本酒には値段の糸目はつけない発想が目立った。偶々「教育」に関する話題になった時、今日本で何が問題かと問われ、僕は「教員一人当たりの子どもの数」と答えた。周知のようにOECDなどの先進国における「教育」にかける予算で日本は低い部類にあり、特に「学級の人数」が長年にわたり改善されないで来た。だが彼女からは「教員のプロ意識が足りない」という趣旨の反論があり、「プロなら何人でも担当すべきだ」と強く主張された。「自由競争」とはまさにこういうことで、その発想において「教育」については考えるべきではないことを思い知らされた出来事であった。

「新自由主義」とは2000年代になってから世界を席巻している考え方である。『デジタル大辞泉』に拠れば、「政府などによる規制の最小化と自由競争を重んじる考え方。規制や過度な社会保障・福祉・富の配分は政府の肥大化をまねき、企業や個人の自由な経済活動を妨げると批判。市場での競争原理により、富が増大し、社会全体に行き渡るとする。」とある。そして「補説」には、「しかし、再配分よりも富の集中や蓄積・世襲化が進み、貧富の差を広げるという見方もある。」と加えられている。この考え方を押さえておくと、現在、日銀が「金融緩和」を「引き締め」に転じそうになりつつ、再び「維持」の方針を打ち出したのもよく理解できる。緩和を是正すればこの10年ほど行われてきた「緩和政策」を否定することになるからだろう。さてすっかり「経済」の話題になってしまったが、国家の経済観念はやはり「教育政策」に大きな影響を与える。「学級人数」を減らして密度の濃い教育をしたくとも、財務省が首を縦に振らざればできない。自由競争に放たれた学校環境は、私立学校の競争を激化させ公立離れを助長し受験実績を唯一の指標のごとくして社会が学校を評価するようになる。甲子園を始めスポーツの世界でも、事情は同様だろう。最近になって保育士の幼児虐待が大きな社会問題になった。多分これも「最近」ではないのであろう。「保育士一人当たりの担当人数」がやはり先進国の中でも多く、保育士個々に多大なストレスがかかる。だからといって虐待が容認される訳ではないが、酒や料理を捌くように子どもを育てることはできない。「異次元の少子化対策」という言い方にも大きな違和感を覚えるが、それは既に「異次元」に予算配分をしてこなかったことを暴露したに過ぎない。「新自由主義」の影響ばかりではないが、あまりにも世界は苛立ち過ぎているではないか。

ゼミの人数など国立大学はまだ恵まれている
だが削減される予算の中で個人の努力で成り立っていることも少なくない
「異次元」を実行してようやく「普通」である教育の現状はこの国の将来を危うくする。


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