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新年歌会始ーお題「友」

2023-01-19
「コロナ禍に友と楽器を奏でうる喜び語る生徒らの笑み」天皇陛下
「皇室に君と歩みし半生を見守りくれし親しき友ら」皇后陛下
「旧友のごとくなつかしあかねさす夕陽の丘に犬とゐる人」召人・小島ゆかり

新年15日を「小正月」とは、ほとんど言わなくなってしまった。かつて15日が祝日「成人の日」であったゆえ、まだ言い易い環境であったが「祝日法」の改訂でそれも失われた。「1年の計は元旦にあり」とは云うものの、この「半月」を大切に重んじることもしなくなった。だが皇居宮中では元日から新年の諸行事が行われ続け、この日の「歌会始」でそれも一段落となる。午前中にNHKTVの中継があったが、非常勤先の講義が2コマあるため観ることができなかった。だが最近は「見逃し配信」を、容易にWeb上で観ることができる。弁当をいただいたのち、しかも要所を絞って早送りなどもWeb画面では至って容易なのでようやく観ることができた。お題は「友」、奇しくも世界の国々が「友愛」を求めるべき方向から反対に進む悪辣な情勢下で、このお題は大変に貴重な歌を生み出す契機となったことだろう。

陛下御製は、一昨年に和歌山で開催された国文祭・芸文祭でのご体験が素材であったと云う。ご自身も楽器演奏を嗜まれる陛下のこと、オーケストラで友とともに演奏する喜びに深く共感されたお歌である。また皇后陛下のお歌は、皇室に「半生」を捧げて来られた思いと、それを常に見守ってくれた親友への思いを詠まれている。世間はあれこれと言うものだが、親友こそはどんな時も自らの味方をしてくれたという感慨もあるはずだ。両陛下の歌が双方とも一般の方を思い描かれ、その温かい思いを素材にしているところが貴重である。また今年の召人は、小島ゆかりさん。宮崎にもよくお出でになり、今年の3月は牧水顕彰全国大会でお会いできる。小島さんの歌もまた、「夕陽の丘に犬とゐる人」と大好きな犬を登場させ、第三者のことを「旧友のごとくなつかし」と詠う。こうして詠歌により「他者」に思いを馳せることで、社会は相互の優しさを回復するように思う。見知らぬ歩く人に対する親族や旧友のような思いやり、これこそがまさに「友愛」ということなのだろう。

主体「われ」が基本の詠歌でどんな視線を詠うか
歌のことばに「友愛」を載せて、「平和」を堅持する思いを強くする
何よりも「うたことば」を大切にする国であることを再考すべきであろう。


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