痛みも露わに伝える眼ーあらためて猪木さん追悼
2022-10-07
眼に現れる闘魂・優しさ・苦しさ耐えている姿も包み隠さず
生きていることが花
NHK「クローズアップ現代」(5日放送)のアントニオ猪木追悼特集を観た。同番組では数ヶ月前にも猪木さんにインタビューを企画し、その声を聞いている貴重な映像も流された。常人であればあれほどの「燃える闘魂」が、病いで弱り切った姿をカメラに晒すのは嫌うであろう。しかし猪木さんは、自らが病の苦しみに耐える姿を見てもらうことにも意味があると了解したと云う。この姿勢は、まさにリング上で幾多もの「燃える闘魂」を見せてくれたことに重なる。猪木さんの闘いに僕らが興奮したのは、「強い姿」だけを見たからではない。相手の技を真っ向に受けて、苦しむ姿も見たからだ。僕が記憶にある中でも、スタン・ハンセンのウエスタン・ラリアート(相手の正面から喉首あたりを狙い腕で張り倒す技)をまともに受けて泡を吹いて失神したことを鮮明に覚えている。悪役のタイガー・ジョットシンから受ける凶器攻撃なども、どこかまともに受けてしまう印象。その耐えている姿が爆発して反撃に向かう、僕たちが感じた闘魂は「強弱表裏一体」であったのだとも言える。
日本プロレスから、ジャイアント馬場さんの「全日本」と猪木さんの「新日本」に分裂した際もそうだ。会社の立ち上げは、大きな苦境であっただろう。さらにプロレスは「八百長だ」「新聞が取り上げない」ことに抵抗するため、ボクシングのヘビー級王者・モハメド・アリとの異種格闘技戦を企画した。リングに寝たままの闘うスタイルに勝負がつかず酷評され、さらにはアリに支払うファイトマネーで会社は大きな負債を抱えたと云う。こんな経営面での苦境も、社会には包み隠すことなく露わにしていた。番組でも猪木さんを長年撮り続けてきた写真家の方が語っていたが、すべてはあの「眼」こそが魅力の原点だと云う。「闘魂」も「優しさ」も「苦しさ」もある。他のレスラーが追随できない大きな魅力は、あらゆる感情を晒け出すあの「眼」なのだ。政治の世界を見れば明らかだが、多くは「体裁を繕う」ような脆弱な「眼」しかない時代。「苦しみも露わに」僕らは猪木さんから学んだ「弱さの露呈こそが強い」ことを大切に生きたいものだ。
競技は違えどその眼は
イチローさんに大谷さんに引き継がれる
どんな分野でも弱さを隠さずに前向きに歩いていくべきなのだろう。
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