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スケザネ(渡辺祐真さん)『物語のカギ』を読み始めて

2022-07-31
副題ー「読む」が10倍楽しくなる38のヒントー
「文学」が嫌いではなく「国語授業」が嫌いだったという学生の声
「文学理論」を適切に押さえていない「国語教師」の現実を浮き彫りに

親友のライター・真山知幸氏と対話する機会を得て、「スケザネさん」のことを話題とした。書評系YouTuberとして活躍しており、俵万智さんとのオンライン対談などもある。既に2021年6月号『短歌研究』には、「俵万智の全歌集を『徹底的に読む』」という特集も組まれていた。その冒頭の自己紹介では、高校時代に文芸部に所属し『サラダ記念日』の歌に触発されて創作した短歌が、第13回宮柊二記念館全国短歌大会にて小島ゆかりさんの選者賞を獲得した思い出が綴られている。俵さんの歌集を読む契機がこの高校時代の体験にあり、「それ以来、実作することはほとんどなくなりました」とされているが、YouTubeの書評で『ホスト万葉集』や『未来のサイズ』を取り上げたことで、『短歌研究』の執筆機会も得たということだ。ある意味で「歌人」(実作を一定の範囲で継続している人)ではない視点からの歌集評として、大変に新鮮かつ的確な内容であった。どこか僕たちが「言葉にしよう」としていた「痒いところ」に焦点を合わせ言葉にしてくれており、研究者として実作者として大変に参考になっていた。

さてそのスケザネさんの初の著書『物語のカギ』が刊行(2022年7月27日)されたので、早速購入して読み始めた。真山氏も既にYouTubeにて書評を述べているが、「物語の読み方」というのを教わる機会がなかった、ということに気づかされるという所感を持つ一書である。国語教育にも携わる文学研究者として、まさに僕自身の「痒いところ」であったことを明晰に素朴に炙り出してくれている。例えば、「物語が大切にするのは『特殊性と具体性』」などは、短歌に直結した考え方として有効である。「作者の意図は正解じゃありません!!!!!」という点を「国語の授業の弊害」として強く訴えているあたりは、まさに現場の実態をあからさまにした指摘である。テクスト論としての「作者の死」の問題にも言及しているが、「国語」の現場の理解は程遠く「作者」が「正解」を持つという偏向の渦中で授業づくりがなされる。その「正解」とはいっても所詮は「指導書」とか、せめても一教師の「解釈」なのであって、学習者がどんなに多様な「面白い」読み方をしても「教室」では試験があるからと「誤り」とされてしまう。大学に入学してくる多くの学生の声を聞くと、そんな「国語授業」によって「文学」までもが嫌いになってしまっているのだ。ある意味で、僕ら現場に携わる機会の多い研究者の問題だと、甚だ自省の念を強くするところだ。現代の若者の間で、YouTubeの力は甚だ大きい。それゆえに既に講義においても、スケザネさんの紹介をしたのだが、多くの学生がそれに触発され『物語のカギ』を読んだ上で、将来は教壇に立ってもらいたいと思っている。

入試だけを目標とする「国語」の弊害も多く
「面白い」を「マンガ」や「映画」などの例も出し縦横無心に述べる一書
スケザネさんと交流できる日が今から楽しみである!!!!!


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