大人エレベーター
2011-01-04
3日(月)第87回箱根駅伝の復路が行われ、前日の山登り5区で東洋大学の柏原に逆転を許した早稲田大学が、18年ぶりの総合優勝を果たした。しかも、現コース設定になってからの新記録10時間59分51秒の快挙である。総合2位となった東洋大学とは21秒差というから、実に過激なレースであったかが知られる。確かに、前回早稲田が総合優勝したなどというのは、記憶の彼方にある。現監督の渡辺康幸氏が現役1年生の時以来というから、年代的な隔たりも厚い。給水ポイントで選手に水を渡しつつ、指示を伝える渡辺監督の走りは、既に30代後半を感じさせた。その駅伝テレビ放送を見ていると、スポンサーのサッポロビールのCMに目が止まる。「大人エレベーター」という題材で、年齢に該当する階に行くと、その年齢の人が待っていて、年代論を語ってくれるというもの。例えば46歳の階に行くと、「20代で引いていた弓が、今飛んでいるようなものだ」とその年齢の人が語る。70代の階に行けば、円熟した人生論を聞くことができるというもの。最後に25歳の階に降りると、白鵬がカウンターに座っており、深々と一礼をする貫禄に、思わず笑みがこぼれてしまうCMだ。
昔から、タイムマシンがあればいいのにと思うことがよくあった。未来へ飛翔し、予想もしていない自分に出会ったり、はてまた、過去に遡り自分のルーツを辿ったり、また自分の過去をやり直したりできたらいいという気持ちがあった。しかし、宇宙計画やロボットは現実となっても、時間を操作することはいつになっても無理であるような気がする。それとも、それ自体が猿知恵であって、将来、飛躍的な科学の進歩があれば、時間旅行も可能なのであろうか?科学的な検証は抜きにして、我々は自己の思考(妄想)の中で、時間旅行をすることはできる。
90歳を超える恩師から、年末に手紙をいただいた。その締め括りに、「昔のことは思い出さないようにしています。未来を考えて生きた方が人間として面白いでしょう。」とあった。齢90歳を超える恩師が、このように前向きな生き方をしている。いや、前向きであるから長寿であるのかもしれない。過去をやり直したいと思うなら、今から前進してやりたいことをやればいい。前に進む実行力と行動力こそが、我々をどの年代にも飛翔させるセルフタイムマシンとなるのだ。人の生き様は様々であり、その年代にこう生きねばならないという鋳型があるわけではない。
結局、「大人エレベーター」のCMも、「出会いの数だけ乾杯がある」とビールを売り込んで締め括る。それは、様々な人間と出会うことこそ、自らのタイムマシンを進化させる秘訣があるようにも聞こえる。他のどれだけ多くの人生を、自らの生を賭して出会い、話を聞けるか。人間と出会うということの重みは、それほど深い意味合いがあるように感じるのだ。
駅伝中継が終わり、ジムで「トレーニング初め」。冗談を連発する男性インストラクターの笑顔が、今年もそこにあった。トレーニングを終えて帰り際、受付の若い女性もいつもの笑顔。こちらから「今年もよろしく」と声を掛けようかと思っていたら、先方から「今年もよろしくお願いします。」と丁寧な言葉を贈られた。これには年甲斐もなくドキッとしてしまった。自分が掛けようとしていた言葉を、そのまま先手で返された感覚で、不意討ち的なタイミングであったからだ。こうした挨拶の言葉一つに、年代の壁はない。むしろこちらが青さを露呈してしまった一瞬であった。
今年は、自ら「大人エレベーター」の様々な階で降りて、じっくり相手の言葉に耳を傾けるとしよう。
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