喩えがたき思いを抱えて文学を見つめる
2022-07-09
一つの速報がが駆け巡るLINEで親族からそしてSNSに溢れる様々な憶測
「この社会は」「この国は」の思いを胸に祈る午後
素直に自らの心に整理がつかない、喩えがたき思いを抱えて昼以降の時間を過ごした。LINEで速報を知らせてくれた母もそのニュースに同じような心境になっていたのだろう。妻も職場からLINEををくれた。身近な愛する人と身を寄せて共有しなければならない事件、この戦慄な凶行に対して身を竦める思いが聳り立つ。いやだからこそ怯んではいけない、僕がいまできること、いま語れることは何か?昼休みにそのように考え直し、午後一番の講義に向かった。前週に中世の「連歌・謡曲」を扱っており、「謡曲・景清」に関しての課題としていた。講義冒頭ではその振り返りとして「中世の武家の生き様」への学生たちの意見について評した。武力により権勢を手に入れる時代、そんな中で「敵であっても敬意を忘れない」という点に多くの学生が言及していた。「武力」が物を言い、奉公した御家人たちの命が無為に失われる。「源平の戦い」の前近代的な発想を脱し、僕たちは近現代を生きている。「人を殺める」ことを正当化する理由はあり得ない。
その後、近世江戸時代の「井原西鶴」の文学についての概説。テキストが注目していた『好色五人女』に登場する「お七」について、グループごとに対話した。恋仲になった相手に社会的制約を受けてなかなか会えない「お七」が放火に及ぶ。その理由は相手と出逢ったのが火事騒ぎの際であったからということ。著名なこの話は、「お七」が火あぶりの極刑になるという結末の悲恋譚である。江戸時代の恋の複雑な事情、そして「死刑」ということに僕らはいま現在の問題としてどう向き合ったらよいのか?そんな話題を各班が積極的に議論し、最後は話し合った内容を全体で共有した。「文学」に描かれたことは、決して「絵空事」ではない。時代が違うからこそ「いま」を強烈に浮かび上がらせる。「命がけの恋」そして人の「生死」や「社会的権力」が人を殺めることなど、様々な問題意識を近世文学は僕らに教えてくれる。講義を終えて研究室に帰るも、未だ胸の中の嫌な思いは変わらない。仕事を続けつつ、この国の元総理の訃報に接することになってしまった。
帰宅してもTV報道を観つつ
妻とこの時代をこの社会を憂え続ける
僕はいま、何をどう表現したらよいか?わからないゆえに旅に出る。
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