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「涙わりなしほほゑみて泣く」葛藤ありてこそ人の心

2022-06-28
「海を見て世にみなし児のわが性は涙わりなしほほゑみて泣く」(若山牧水『海の聲』)
「プラスかマイナスか?」「ネガティブかポジティブか?」
視点を据えたら融合や反転を試みてみよう

参議院選挙が近づているが、果たしてその争点は?投票率の異常な低下には歯止めがかかるのか?10代20代の投票率が問題にされるが、他の世代も見本になるほどの数なのだろうか?誠にこの国の政治への参加意識の低さや社会への問題意識の薄さには甚だ憂えを抱かざるを得ない。既にふた昔・20年ほども前になろうか、「郵政民営化に賛成か反対か」と与党が争点を明確にして実施された総選挙があった。今にして思えば郵便保険の杜撰さや土曜配達の廃止など、民間企業宅配業者にサービスも利益も凌駕され競争力のない宙吊りな「民営企業」となってしまった。20年でさらに過疎化は進み、街の拠点であった郵便局の役割を失った場所が多いことだろう。人員削減が甚だしいのか、郵便窓口の職員さんの人間的な親しみの笑顔も消えてしまった気がする。高齢化社会でこそ郵便局は、多くの高齢者の頼みの綱であったはずだ。というように争点をバラエティー番組の安易な「クイズ」のように「○か✖︎か」で問いかけることそのものが、「思考停止」への一歩目であるように思う。4ヶ月を経て未だ終わりの見えないウクライナ侵攻でも、ロシアの長期独裁政権が自らの強硬な政策に「✖︎」を唱える勢力を排除したことが、許しがたい暴力の要因にもなっている。

傾向を読んだら反転や融合を考えてみる。文学には喩えようのない葛藤が見え隠れし、それこそが人間の心そのものだろう。冒頭に引いた牧水の歌は、そんな人間の「性」を素朴に表現したものだ。「涙わりなし」と「涙のわけは道理ではわからない」もので、「かなし」という一面的のみで捉えられるものではない。「かなし」にも「愛し」に通ずる感情の断片もあり、例えば「ピエロのほほゑみ」の背後には「悲哀」が潜んでいる。「泣く」ことも「悲し」に端を発するが、向き合う対象への「愛情」があってこその「涙」ということになろう。言葉を言葉の額面通り捉えることも使用状況によっては必要であるが、僕たちが自分を見つめて捉えきれないのは「額面通りではない言葉にならないそんな時」があるからだ。たぶん多くの芸術表現がこの狭間を往還し、融けあい円環的に作用し合う真実を見つめようとしている。人生を生きていれば「額面通り」ではないことに直面することの方が圧倒的に多く大切であるはずだ。ゆえに特に大学入試を通過してきた学生たちが「正しいか誤りか」で問う傾向が強いのを、「文学」こそが反転や融合へ導く大きな学びのステージとなる。あなたも「・・・は〜だから」という思い込みで物事を考えていないだろうか?恋の拒絶を表現した贈答歌は「額面通り」で終わりではない。「行きません」には、「行きたいです」の心が含まれるのが人間の面白いところである。

「わかりやすさ」を追い求めるゆえに罠あり
「○か✖︎か」は一方を排除する図式である
「涙わりなし」という牧水の歌から学ぶことは多い。


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