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源頼朝に抱く有能者を消すイメージ

2022-04-22
「源氏」三代将軍までしか続かなかった
「徳川」は御三家を有し十五代まで
頼朝の身内の有能者を恐れる傾向が大河ドラマでも

僕が持っている落語の持ちネタに「紀州」がある。マクラの後に冒頭に記したように、「お武家さんの世の中では『徳川家康』は頭のいい人で、家系の将軍が絶えないように御三家を作っていたものです。それに比べて鎌倉幕府の源頼朝は、身内のできるやつを警戒し恐れてみんな殺してしまうもんで、源氏は三代将軍までで絶えてしまった。」などという口上で始める、「徳川御三家のお世継ぎの物語」である。今年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、北条義時(役:小栗旬)を中心に「鎌倉殿(頼朝)」の周辺の人物相関模様を、三谷幸喜脚本が実に現代的な演出で巧妙に描いていて面白い。あまりに時代考証より現代的でコミカルな演出も多く、往年の大河ファンは嫌悪しているとの話も聞くが、史実を元にした虚構として観るべき真実は描かれていると思う。前回の放映は所用で録画で観たのだが、関東での地位・権力を束ねようとする頼朝(役:大泉洋)が有力者で最大の貢献者であるとも言える「上総広常(役:佐藤浩市)を多くの武者を集めた前で「謀反者」として成敗してしまうという場面で、耐え難い感情を視聴者に抱かせた。この大河そのものが「北條」の視点で描かれており、鎌倉幕府の源氏としての将軍は三代で絶えるが、執権・北条政子らに政権が引き継がれる伏線としてよく理解できそうである。

梶原景時(役:中村獅童)による上総広常の斬り方が事前に短刀をスリのように剥奪し凄惨なイメージで背中から斬ったという演出も相まって、その暗殺を首謀した「頼朝」の冷酷な性格が見え隠れした。もっともドラマとしては「頼朝」を大泉洋さんが演じていることで、そのややとぼけたイメージが冷徹さに胡椒をかけて臭みを消しているようにも映る。僕らの時代から教科書に載っていた「頼朝肖像画」はどうやら本人ではないという説が最近は有力になった。源氏将軍で言えば、「三代実朝」が歌人としても有名であるのも特徴である。それにしてもこの「頼朝」のリーダーとしての性状の傾向は、現代社会にも通づる教訓であるようにも思われる。中高教員時代に教科主任の役職であったため、新人採用に携わったことがある。その際に大切にしたていたのは、「自分を超える可能性がある人を採用したい」と思っていたことだ。もちろん他の教科でも採用人事が進むことがあったが、「自分の配下に据えて言うことを聞く」タイプを採用したのではと憶測されるケースも少なくなかった。組織全体が活性化するには、明らかに採用する側を凌駕するタイプを取り込み、自らの発展に刺激を受けることが得策だろう。それは徳川幕府でいうならば、8代吉宗(時代劇では『暴れん坊将軍』である)が初めて御三家紀州から将軍に就いたことで活性化したのを見れば明らかだ。だが組織の多くはむしろ頼朝型で、自らの既得権を守ることが念頭にあるからか、むしろ服従し自らを乗り越えることのない人物を採用することが少なくない。以前からこのような傾向を現実社会に察知していたのだが、今回の上総広常の惨殺は象徴的に頼朝のイメージを焼き付けたような気がしている。

仕事をしない人が得をする世の中では
研究は公平公正に評価されるものと思っている
自らを刺激するライバルがあってこそ仕事は活性化するものだ。


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