プロジェクションマッピング歌会ーテーマ詠「渓流」
2022-03-30
「屏風歌:倭絵屏風の画賛として、各面に画かれた絵の世界を主題とし、おおく絵中の人物の心に託して詠まれ、その面の色紙形に書かれた和歌。」
(『国史大事典』「屏風歌」の項目・橋本不美男執筆より)
附属図書館学生創発活動として今年度に集中して取り組んで来たのが、工学部大学院のプロジェクションマッピンング制作チームの学生と短歌会学生との融合した活動である。プロジェクションマッピングとは、プロジェクター(投影機)を使用して空間や物体に映像を投影し、重ね合わせた映像にさまざまな視覚効果を与える技術のことである。そもそも学内学生公募企画「チャレンジプログラム」で予算を獲得した工学部院生チームが、投影内容の素材探しはどうしたらよいか?と考えていた際に、附属図書館創発活動の場において短歌会や僕のゼミ生らが試案を提供するという対話を持つ機会をこの1年くり返して来た。作品は3種類制作され、青島を背景にした牧水の「檳榔樹の古樹を想へ・・・」をモチーフにしたもの、図書館の窓が「どこでも窓」になるというもの、そして宮崎の清らかな渓流を壁面いっぱいに再現した大作が制作された。今回はこの「渓流」のプロジェクションマッピングが投影された会場で、歌会を実施するとどうなるか?というさらなる発展的な融合の試みであった。
テーマ詠「渓流」に出詠11首・参加9名+見学参加2名。普段とは違う暗闇の中ではあるが、渓流そのものが学生の足元まで流れ来るようなリアルな空間のなかでの歌会は、新たな可能性が感じられた。学生らの発案で渓流映像が流れ来る床に、畳状の敷物に座布団で座り込むという趣向もよかった。歌としては「枯葉」「(渓流の)岩」「高千穂」「ヤマメ」「鮎」「加江田渓谷」「清流」「水流(そのものの気持ち)」「方舟」「小川」「涙(渓流への見立て)」などを素材とする歌が並んだ。僕自身は同時刻に附属図書館運営委員会もあったので、そちらの「報告」の際にはタブレットでzoom(オンライン)による現場からの生中継も試みた。歌会に戻って思ったことは、日本の和歌短歌史には冒頭に解説を記した「屏風歌」が平安朝において、約百年間ほどは盛行であったことを考えるべきではないかということ。プロジェクションマッピングで投影される立体的動画作品を主題とし、絵中の人物に成り替わることでその心に託した歌が読まれというわけである。今回の詠草には、客観的に「渓流」の景を描きその場に創作主体が居るという点が要点となる歌が多かった。中には「渓流の水」そのものに成り替わる心を詠む歌もあって、大変に興味深かった。この歌会の模様は動画撮影がされており、近く大学HP等でダイジェスト動画が公開される予定になっている。
出詠作品の展示会などへ試案は展開する
新しい技術と短歌のコラボレーション
科学技術の発展がどれほど人の心を癒すか、短歌と融合することで叶えていきたい。
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