プロとして学生と語り合う
2022-03-16
「プロ」はスポーツ選手のみならず大学教員としてプロであるためには
学生たちと語り合う貴重な時間
県内高等学校課題研究発表会がオンライン開催され、「人文社会系」講演で50分間の話をさせてもらった。題目は「三十一文字(みそひともじ)の宇宙への旅」として、短歌の表現の奥行きには「宇宙」が読めるという内容とした。僕自身が「研究への出発点」とした文学への興味とともに、高等学校教員としてスポーツの全国大会に出場する教え子たちがプロの道に進み、厳しい環境で自らの技量を試している姿に感化されたという話題を導入とした。自らに妥協があったり「結果」を出せなかったらそれで終わり、プロとして輝いた教え子たちもいれば、自由契約となって再生の道を歩む者もいた。そんな教員生活において「文学・国語教育の道で僕自身はプロであるだろうか?」という思いが芽生えた。教員となって10年に迫ろうという時期に大学院進学を志し、修士を3年(通常2年で修了可能)博士後期課程を6年満期まで、さらに3年の間に学位論文審査を受けて合格するまで12年という月日において自ら学費も捻出して一世一代の賭けに出たのだ。その結果、僕はいま宮崎で大学教員として教員養成に携わっている。研究の原点となった古典和歌から最新刊の短歌とJ-pop比較まで、高校生に興味深い話題を提供することができたと思っている。
本来であればどこかの会場で一堂に会して行われるであろう発表会、オンライン講演は集まることによる感染リスクはないが、高校生たちの反応がわからない。画面越しに教室での様子は多少わかるのだが、音声を含めて細かな反応は講演者に伝わって来ない。欲を言えば講演後に高校生らと雑談などもしたいと思っている口なので、誠に講演後の虚しさが止まらない。この2年間、僕らは大学の講義でも同様の憂き目を見て来た。授業前後の雑談を学生たちとできない、いわば授業には無関係なことを語り合う場がなくなってしまったのだ。授業受講者のみならず、特に自らのゼミ生たちとの雑談や語り合いが少なくなってしまったのは誠に残念なことである。文学のことでも、実習や講義など学生生活のことでも、はてまた個々の学生の「恋ばな(恋の話)」でも、ゼミ以外の空間・時間に語り合うことは貴重だ。所謂「飲み会」(宮崎では「飲み方」という)で語り合うことが学生の成長に大きく貢献すると考えている。これは僕自身が大学学部で指導教授との酒宴からこそ多くを学び、多くの先輩後輩と豊かに語り合えた経験に基づく価値観である。学生たちの素のままの意見・実情・褻の生活を知ってこそ、文学に向き合うゼミの意義が高まるということである。そろそろ「感染への注意」を怠ることなく、貴重な学生たちとの時間を取り戻してもよい時期なのではないだろうか。
「人の世にたのしみ多し然れども酒なしにしてなにのたのしみ」(牧水)
妥協なき「プロ」として学生たちと付き合う貴重な時間
また、宮崎の多くの高校生たちが「三十一文字の宇宙の旅」にあくがれることを願いつつ。
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