文学は死なずー『宮崎文学の旅・上下』宮日出版文化賞受賞
2022-03-02
宮崎県に関わる文学作品を古典から近・現代まで集成「バランスの取れた仕上がりだ。」
「古典作品も注釈や現代語訳で読みやすい。」などの選考理由。
文学があるからこそ、戦争など決して起こしてはならない。「戦争経験なき戦意はひたすら昂進する」という言葉があるが、市中に投じられるミサイルや爆弾の攻撃の映像をいま世界が見つめ、この侵略には断固たる抗議の声を上げ続けるべきだろう。たとえ「戦争経験」がなくとも、僕たちは文学を読むことで想像力を働かせ、「戦争」がいかに人類の蛮行であるかを悟ることはできる。それが、人間としての理性であり良識であり惻隠の心である。3月になって春の足音が増す中で、1日も早い侵略戦争の停止を訴えたい。人間は「当事者の立場で物事を考えること」ができる。日常の些細な言動でも、「相手の嫌がることはしない」のが原則であろう。その基盤に想像力があるからこそ、真心や誠意が生まれるものだ。侵略を断行する指導者にも、親もいれば妻も子どものいるはずだろう。文学には、生きる苦しみや哀しみなど辛いことが多々表現されている。自らが体験しないことでも、体験したように読めるのが文学の効用である。
編著に携わった標記の共著書が、宮崎日日新聞出版文化賞を受賞したと紙面で発表になった。構想段階から3年近くを要したであろうか、宮崎で考えられる文学研究者が集い、各専門分野を中心に担当し郷土を旅する文学集成として纏め上げた。僕は「中古・中世・近世」の古典作品を担当したが、決して専門とする「和歌」関係の文献は多くはなく、説話・物語・謡曲・浄瑠璃に至るまで多ジャンルを現代語訳を中心に執筆した。それはそれとして大変自身の勉強になったとともに、宮崎に関係する文学の深淵を知ることができた。「生目」という市内の地名の由来となった「景清」など謡曲を現代語訳に起こしていく作業は、多様な想像も掻き立てられ充実した自らの読書体験でもあった。また宮崎出身の作家ではなくとも、ノーベル文学賞を受賞した川端康成などは宮崎の地を愛したことが知られ、『たまゆら』という小説には若山牧水の歌が引かれ宮崎の1964年前後の光景と見事に融合している。川端は今年4月16日、没後50年を迎えると云う。冒頭に記したように「バランスの取れた仕上がり」と評していただいたのも、「古典」と「詩歌」と「近・現代小説」までもが、「宮崎」をキーワードに見事に集結し響き合っているからであろう。
本書を使用した講義構想も考えたい
自然と平和と響きあう文学
社会全体で文学が軽視される中で、宮崎の文学は死なず。
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