テーマ詠「恋とチョコレート」ー宮崎大学短歌会歌会
2022-02-16
「バレンタイン」をどう捉えるか?本気の恋の告白かチョコレート狂騒曲なのか
用意すれど渡せなかったチョコたちの姿も・・・
いつしか大学の定期試験期間も終わり、いつしかバレンタインも過ぎ去った。2月14日という日付は大学においては既に休暇期間でもあり、自分が学生時代を含めてバレンタインにおける思い出などほとんどない。ところが高等学校では(自分は男子校であったので)、特に僕が教員になってからバレンタインの1日は特別な日であった。多くの生徒らがチョコレートを学校に持ち込み、意中の相手に渡そうとするのはもちろん、友人や教員に渡そうとする動きのある日であった。大抵は学校の規則で「菓子持込禁止」にしているわけだが、この日は特別に守られたかどうかはともかく「食べない」を条件に「持込解禁」にしているのが常だった。教員時代の僕は、正直なところ職員室の机上にチョコが溢れるほどいただいたことがあり、今でも覚えている最高記録は31個であった。それにしても、「クリスマス」と同様に「西洋の容れ物」を借りて躍起になるのは菓子商戦でもあり、特に宗教的な意味もなく「チョコレート狂騒曲」が1970年代後半ぐらいからくり返されるこの国。「義理チョコ」「友チョコ」なども波があるようだが、「告白」など度外視した乱痴気騒ぎの印象も受けてしまう。
そんなテーマ詠の歌会を、オンラインで開催した。学生たちにとっては高等学校時代も近く、激しく甘い甘い短歌が詠草に並んだ。「好き」という言葉を率直に詠んだものもあり、「ごちそうさま」という印象の歌を批評するという展開が目立った。「手作り」か「既製品」か?製品名そのものを想起させるもの、「チョコペン」とか「砂糖の量」など、バレンタインの「恋とチョコレート」も多様であると実感する。中には校舎内に放置されたチョコレートの姿を描くもののあり、どこの高等学校でも狂騒曲があったことを思わせた。反対にバレンタインの光景を「こそばゆし」と眺める歌もあり、まさに多様な受け止め方のある年中行事であることがわかる。果たして世間では、バレンタインを契機に恋が成就しゴールに至った方々はどのくらいいるのだろう?などと考えさせられてしまう。それにしても著書『日本の恋歌とクリスマス』にも書いたが、「恋に関する祝祭」に当たるものがこの国では失われてしまったのであろう。「乱痴気」に社会の流れに同調するのではなく、冷静に自らの恋心を見つめる日があってもよい。
「いざ唇を君」
牧水の恋の熱さと純朴さに学ぶ
テーマのせいか、短歌会史上最長時間の歌会となった。
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