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新たな動詞で生きるー福祉国家デンマークから学ぶ

2022-02-02
「さわる・まじわる・むれる」から
「ふれる・つながる・つどう」へ
前者は「身体」後者は「心」(参考:若松英輔『弱さのちから』亜紀書房2020)

約2年間、私たちは「元に戻りたい」という願望を常に持ちながら、「先行きは全くわからない」社会を生きてきた。「時間」がどんな科学が進歩しても遡及できないように、いっそ「元には戻れない」と考えた方が理性的なのではとさえ思うこともある。ここ数日、小欄で傾倒している若松英輔『弱さのちから』を参考に、冒頭に羅列したような動詞の転換で新たな社会を模索すべきだということを考えさせられた。「さわる・まじわる・むれる」は近くにいる人との身体的な接触、だが「ふれる・つながる・つどう」は遠くにいる人でも「こころ」を交わすことができるというわけである。前者が肉体的で後者が知的であるのも、すぐに理解できるであろう。「さわる」はやや卑劣な行為さえ連想でき、「まじわる」は乱痴気な気分を含み、「むれる」は保身的な利害を感じさせる。もし「元に戻りたい」という願望の中にこうした要素があるのだとすれば、社会の成熟という意味で捨て去った方が得策な動詞ということになるだろう。「ふれる・つながる・つどう」にこそ、成熟した社会のあり方としてのヒントが窺える。

「デンマークで感染急拡大」という報は、一般的なニュース番組でも伝えられている。だが、福祉国家である当国は、まさに成熟した方針を掲げて「行動規制はしない」次なる方向性を打ち出したのだとあるTV番組を観て知った。流行しているのは「オミクロン」のさらに次なる変異株であるらしく、「元祖オミクロン1」よりも更に感染力が強いらしい。「オミクロン」の「1」による感染は下がり始めても、すぐさま「2」による感染拡大が起こったために「急拡大」したということらしい。もう一つの理由は、徹底的な検査の拡充によってその状況を捉えつつも、デンマーク政府が「行動規制(マスク義務なども含む)」を解除する方策に出たことだ。日本では考え難い政策と言えそうだが、その根底には福祉国家としての基盤が強固に存在しているという根拠があるらしい。高齢者のワクチン接種率は9割、その他の世代でも3回目までを6割、検査キットは安価で市中の薬店で買い求めることができ、医療費はすべて無償だという。デンマーク在住のジャーナリストがオンライン出演していたが、同じカフェに行っても周囲の人々がデンマークは「陰性である確信」があるが、日本(帰国時)は「誰か陽性がいるのでは?」と懐疑的になると云う。もちろんデンマークでも諸々の問題はないわけではないだろうが、少なくとも政府が「ふれる・つながる・つどう」という動詞で科学的に熟慮した上で方向性を示したというように僕には見えた。

検査・ワクチン・緊急事態宣言など
2年をかけた堂々巡りが続いている
せめて僕たち一人ひとりが、新たな「動詞」を意識してみたらどうだろう。


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