受験・偏差値・この社会は・・・「命の授業」を思い返し
2022-01-16
中学校受験の経験からライフワークのように「受験社会」の弊害を考えて
歪みを矯正しないまま長き年月を経て・・・悲し過ぎる事件
一報を聞いた時、耳を疑った。共通テスト東京大学会場近辺での悲しすぎる事件、容疑者は高校2年生であると云う。現場の様子をTV報道で観たが、僕が中高時代のランニングコースでもあるがゆえ、より現実感を持って重く受け止めた。まずは被害に遭われた方々の回復を、心から祈りたい。それにしても、僕らが「悲し過ぎる」と受け止める根源は何だろうか?昨年来、巷間で頻発する無差別的な凶行、個々の事例を個々に精査しなければならないのは理解した上で、「自分も死にたい」という共通項が大変気になる。この社会の歪みの様々な波を受けて、生きてきた背景や状況は違いながら、「誰かを殺めて自分も死ぬ」という心の闇を、僕たちは今どう受け止めたらよいのだろうか?思い返せば社会的反響を呼んだ1979年に始まる『3年B組金八先生』の第1シリーズでは、「15歳の母」が大きな話題となった。その中学校3年生で妊娠・出産する「浅井雪乃」の兄は東大受験に失敗して自死するという衝撃的な展開が待っていた。「雪乃」の父親はエリート校で東大を目指している長男ばかりに期待を高め、地元公立中学校に進学して前述の一件に至った「雪乃」を家の恥と勘当同然の扱いをしていた。「雪乃」は金八の住む下宿に身を寄せつつ、寂しさを癒してくれる優しい同級生「宮澤保」に慰められ互いの愛情を深めていく。公立「桜中学校」では金八が主導して「命の授業」を全教員が実践し、妊娠・出産をした「雪乃」を学校全体で受け止めようとする。焦点は「15歳の母」であったが、その根底には都会の中学校受験から大学受験に連なる教育観の格差や、偏差値エリート主義な受験社会が家族を歪め生きることに向き合えない共同体となってしまう社会風潮があったことを忘れるべきではない。このドラマの父親は明らかに兄妹間の差別的な扱いを強行し、母親は父親の強権的な支配に意見できない家庭が描かれていたのだ。
あの「金八」から43年、よく「ドラマに過ぎない」と口にする教育関係者を山ほど目にしてきたが、それがどこか現実の問題を置き去りにする逃げ口上のように僕にはいつも聞こえていた。家庭内で親が偏差値主義で子どもらを差別していく風潮は、未だに蔓延るどころかなお一層深刻ではないかと思うことも少なくない。私立中学校受験熱は高まるばかり、その「私立」も多くが実績として「受験対策」を掲げ、大学に合格できる偏差値上昇ばかりを生徒らに課す教育が目立つ。もちろん「心の教育」を実践する学校があるのも事実だろう、だが偏差値主義は「国語」の授業で言えば、太宰治『走れメロス』や芥川龍之介『羅生門』、夏目漱石『こころ』や中島敦『山月記』などの定番教材に潜んでいる、生きることの絶望や苦悩、そこからどう身を律して生き続けるのか?という大変に重要な「体験」を、「入試には出ない」という妄想的な理由で扱わない場合さえある実情が学生らの経験から聞き取れる。極端な物言いを容赦願いたいが、「東大に入るのが人間として最上」であるかのような偏差値輪切り主義が、思春期にあるべき絶望や苦衷の疑似体験を排除している歪みの根源になっているのではないか。その歪みを「学校」も「親」も「塾」も煽る社会、どうせドラマですがね、生きることに正対した金八の「命の授業」が40年の時を超えて今こそ必要なのだ。この社会が教育の上で「失われた40年」にならないために。
教育がすべきことは
僕の幼稚園の園長が常に語っていた「心育」
桑田佳祐さんが今回のライブで「どん底のブルース」を入れた意味を受け止めたい。
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