「天翔ける鳥たち」の声を聴く
2022-01-03
「おとうとよ忘るるなかれ天翔ける鳥たちおもき内臓もつを」(伊藤一彦『瞑鳥記』より)
鳥たちに耳目を向けつつ
南郷は目井津港を、しばし散策した。いつもは賑わう「港の駅」はまだ正月休み、人影まばらな雰囲気が堪らなく良い。カツオ釣り漁船が正月飾りのように大漁旗を掲げ、穏やかな波間に漂っている。片や小さな釣り船が何艘も停泊しておりその先に漁協や市場、いつも美味しくいただいている目井津獲れの魚がここから水揚げされるのだと実感する。考えるに、海からいただく命の恩恵は大変にありがたい。地名によく使用される「津」は「港」の意味だが、「あつまる」とか「重要なところ」という字義もある。人はこうして「津」を交流点として、自らの命を支えるものたちと出逢って来た。宮崎の食文化が素晴らしいと語るには、こうした「命をいただく」ということにも思いを致す必要があろう。自然が豊かだということは、命を見つめられる場であると言い換えることもできる。
目を空に転じると、港には実に多くの鳶が滑空している。笛吹きのような”あの”鳴き声を聞かせつつ、あくまでマイペースで雄大に大空を舞う。ある一羽が市場の屋根に停まっていたので、スマホで撮影しようとするがなかなか全貌は下から上手くは撮れない。少し歩くと大型の鳥が家の屋根に、近づきつつ撮影をすることに成功した。スマホには「鳥判定機」というアプリを搭載しており、早速それで種類を調査する。写真の精度にもよるので完全には信じられないが、「ダイサギ(大鷺)」と判定された。さらに近づいて撮影しようとすると気づかれて、見るからに重い身体を懸命に羽ばたいて空中に浮遊させ、オノマトペでは表現できないような低音の声を発して丘の方へと飛び去っていった。冒頭に記した伊藤一彦先生の名歌を、思わず脳裏に呟いた。人間はもちろん飛べない動物であるが、内臓のみならず多く「重き」を持ちつつ歩むものだ。「空を飛べる」と鳥に単純な憧れを抱くのではなく、自らがどう「羽ばたくか」を「大鷺」の飛翔に教えられたような気がする。宮崎の自然の豊かさに生きるとは、こうした出逢いを大切にするということだろう。
夕食は僕の両親と「すき焼き」
ありがたき「宮崎牛」の美味しさ柔らかさ
今年も「天翔ける鳥たち」に負けないように羽ばたいてゆきたい。
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