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ふるさとを聴く牧水

2021-12-12
「日向の国都井の岬の青潮に入りゆく端に独り海聴く」
(若山牧水『海の聲』)
基礎教育地域連携科目対面講義

宮崎の自然の豊かさは、様々な場所で実感できる。だが意識して目的地へ行かないと、見逃している素晴らしさも少なくない。僕自身は移住9年目、諸々の機会に自然には触れたと思うが、まだまだ見ていないものも多いと思うことがある。ましてや学生たちは4年間の大学生活のうちに、どれほど宮崎の自然の魅力を知って卒業するのかと思う。県外出身者はもとより県内出身者でも、高校までは自ら県内を味わう機会も限られているだろう。それだけに宮崎の魅力を在学の早い段階で知ってもらう機会は貴重である。既に5年以上になるだろうか、当該科目「『短歌県みやざき』ことばの力と牧水入門」を担当し、9コマのオンデマンド視聴に併せて6コマの対面講義が用意されている。この日は今年度の対面講義第1回目であった。

冒頭に掲げた牧水の「都井岬」の歌をはじめ、「城山の鐘(延岡市)」「尾鈴山(都農町)」「青島(宮崎市)」などで詠まれた歌を各自の意志で選び、同じ歌を選んだ人のグループでの協議を経てプレゼン発表するという課題を今回の中心的な活動に据えた。冒頭の「都井岬」の歌は人気があって、受講者の約三分の一が選び2グループに分けてプレゼンに挑んでもらった。「の」のくり返しによって焦点化されて導き出される「青潮」、その「都井」にしかない海の一部に力強く「入りゆく」という「(岬の)端(はな)」(*第一歌集『海の聲』では「はな」とふりがながある)。自然たる「岬」そのものが生きているかのように「海」にアプローチしていく姿は、壮観などという言葉では言い尽くせない。その大自然の融合の中で小さな人間存在としての「独り」を自覚し、命の根源たる「海聴く」と詠う牧水。「聴く」には、「受け入れる」「治める」「待つ」という字義もあり、自然との融和を求め恋に悩み苦しい人間世界から解放されたいような牧水の雄大な心が見えてくるのだ。

短歌をよむとは命をよむこと
ふるさとを「聴く」という感性
まだまだ知らない宮崎を聴きたい。


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