黒潮の文化をたどるー宮崎ー高知ー和歌山へ
2021-11-24
宮崎から高知さらに和歌山へ「ウツボ」を食する文化があると云う
年のうちに2回開催された「国文祭・芸文祭」
「国文祭・芸文祭みやざき2020」は新型コロナ感染拡大で、1年延期となった。2021年の7月3日から10月17日まで、延期とはいえ前半7月8月は、感染拡大によって各市町村でのプログラムが中止を余儀なくされたり、オンライン開催となったりと担当の県庁の方々のご苦労を思うと頭が下がる思いであった。イベントを開催する側に立つと、「中止」というのは誠に耐え難いものがある。幸い大学附属図書館で開催した「みやざき大歌会」は、ゲスト歌人の東直子さん・田中ましろさんも対面でお迎えできたが、そこに到るまでには学内の承認なども含め困難な道でもあった。吉田類さんのトークショーはオンライン開催、しかしそれだけに類さんと宮崎との関係を上手く引き出すべく類さんのご著書を読み返したりとあらためて勉強したことも少なくない。その中で「黒潮文化」といった趣旨のことが書かれていて興味深かった。宮崎そして類さんの故郷の高知、さらには和歌山に至る食文化では「ウツボ」を食するという共有点があると云う。確かに僕も宮崎に来て1度だけ、地元に根ざしたコアな寿司屋さんで食したことがある。
昨日、NHKにて「国文祭・芸文祭わかやま2021」(本年10月30日〜11月21日)開会式と併せて「みやざき」の開会式と2大会を振り返る番組が放映された。「わかやま」のキャッチフレーズは「山青し 海青し 文化は輝く」であり、「みやざき」の「海の幸 山の幸 いざ神話の源流へ」と共通したものであることを知った。畿内である「わかやま」では、京都・奈良と連なる古くからの文化も根付いており、高野山の僧侶たちの「声明」の声などは心の奥底へと響く荘厳なものがあった。必然ながら神仏習合の色彩も強く、「山に海に祈る」ことに文化の源流があることに気づかされる。盆地で海のない京都市内や奈良県からすると、海に臨む「わかやま」の文化は機内でも大きな世界へ開いていく傾向があるようだ。山があれば渓谷もあり、海とは川で連なっている。NHK番組の後には吉田類さんの「日本百低山」を放映していたが、類さんの故郷も山の奥なる自然豊かな渓谷であると聞く。あらためて山で生まれた若山牧水が、7歳で海を初めて見た際の感激に思いを寄せる。「SDGs」など盛んに喧伝されているが、元来のこの国の文化を取り戻せば、僕たちは自然と共生できるはずなのだ。「宮崎ー高知ー和歌山」という「黒潮文化」の流れを、あらためて地方にしかできない豊かな文化として再認識すべきであろう。
「山を見よ山に日は照る海を見よ海に日は照るいざ唇を君」(牧水)
南国に通ずる海の道
黒潮の豊かな流れの恩恵をさらに引き出すべきだろう。
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