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ありがたき宮崎の縁ー俵万智展に思いを寄せて

2021-11-14
口語を短歌の韻律に載せることを確かにした人
近現代では晶子・啄木・牧水・塚本邦雄の後に名を連ね
その歩みの一年後を生きてきた身として

新刊著書の帯文を、俵万智さんにご依頼申し上げた。『サラダ記念日』から何首か歌を引かせていただいており、また俵さんは『サラダ記念日』当時から「サザン」を詠んだ歌もあり「桑田佳祐」が好きであることなどからぜひお願いすべきと熱く思っていた。しかし、たぶん僕自身が宮崎に住んで短歌を創作し俵さんと身近に交流していなければ、間違いなく成し得ないことだった。この5年半に交流してきたことが、誠に貴重な人生の宝のような体験であることをあらためて思う。先日行われた心の花宮崎歌会でも、僕の一首を「俵万智5首選」に選んでいただいていたり、会の終了後に歌の制作事情を問うていただいたり、誠に短歌人としては贅沢至極な日々を送ることができている。そして今回の帯文も実に絶妙なタイミング、出版社への最終打ち合わせへと宮崎空港を旅立つ際にメールが届いた。このご縁はなんだろう?不思議にさえ思う。というようなご縁と宮崎と・・・みたいなことも新刊著書にはエッセイ的に挿入している。

幸運にも会期が延長されていたので、角川武蔵野ミュージアムで開催されている俵万智展を訪れた。東京で院生や就職した卒業生とともに、たっぷり2時間半は展示に取り憑かれた。展示の中で僕自身の最大の収穫は、佐々木幸綱が『短歌』(平成16年6月号大特集「俵万智」)に書いた評である。覚書としてここに引用をさせていただこう。「この歌集がすぐれて時代の空気を反映していたのは、男女間の連絡メディアが手紙から電話に移行しつつあり、「待つ」感覚が電話的時間に対応しつつある状況のなかで、なお手紙の時間にこだわっていた点である。社会はまだ手紙の時間を忘れてはいなかった。・・・作者自身〈待つ〉が歌集のテーマだということに自覚的だったことはまちがいない。・・・そこが独特だったし、そこが新鮮だった。」偶然であるが僕の新刊を貫くテーマは「待つこと」である。この幸綱の評を読んではいなかった僕が、『サラダ記念日』を再読し、その「〈待つ〉が歌集のテーマ」だったことを浮上させることができたことに短歌人としての大きな喜びを覚えた。会場の中央の床には、俵さんが神奈川県立橋本高校教員を退職しプロの歌人としてスタートした1989年(平成元年)から川のように受賞歴や歌集出版歴などが記されている。僕はその1年後でしかも川ならば大きな蛇行をくり返したが、自らの歩んだ道を重ねる感慨に浸りながら「宮崎」へ到達したのである。

あらためて「短歌は手紙」
若い頃のご両親への手紙の文字が踊る
ありがたき宮崎のご縁


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