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「鍋焼きうどん」は美味い!

2010-12-11
10日(金)その日の昼飯はどうしようか?と考えるようになって何ヶ月かが経過した。それまでは社員食堂を利用していたので、決められた2種類から選ぶしかなく、しかも人気のある方がなくなれば、食べたくもない定食を嫌々でも食べねばならなかった。ある日、その社員食堂の昼食で、サラダを最後まで食べ進めていたら、サラダ皿の底に「ハエ」が逆さまになって「トッピング」されていた。その瞬間、もはやこの社員食堂では食べるまいと心に決めて、給与天引き契約を即座に打ち切った。

 それからというもの、余裕があれば休日にカレーを作り、保温ジャーにサラダとご飯とともに詰め込んで自前の昼食持参で出勤していた。サラダの「トッピング」はもちろん自分で素材を確認した「コーン」とか「ほうれん草」だ。それでもカレーが作れないときや、仕事の後に外部会議などが控えていて、大きなジャーを持参するのが面倒なときは、近所のパン屋でサンドイッチを購入したりしていた。

 この日は、午後はフリーな仕事時間になったので、昼食の為に外へ出た。会社から数分歩いて、ある蕎麦屋の暖簾をくぐった。けっこう広い店内は、昼食時を過ぎていたので客は2名ぐらい。座敷も5卓ぐらい用意されているが、まあ椅子席へと収まった。何を食べようかと思ったが、日中でも寒かった東京地方。ゆえに店のおばさんに「鍋焼きうどんをください!」と注文した。するとおばさんは「エビは入れますか?」と問い掛けてくる。最近の蕎麦屋はアレルギーにも配慮しているのか?などと想定したが、どういうことなのだろう。エビが入らなければ何が入るのだろう?などと考えながら「ハイ!」と元気よく答えておいた。

 蕎麦屋に足が向いたのは、鍋焼きというより「エビ天」が食べたかったからだ。「天ざる」では寒いし、「天ぷら蕎麦」も中途半端、ならば「鍋焼きうどん」という思考回路だった。小生の頭の中では、「エビ天」の載っていない「鍋焼き」はあり得なかった。

 しばらくして「鍋焼きうどん」が運ばれてきた。しっかりした土鍋に蓋付きである。「ごゆっくりどうぞ」というおばさんの言葉に癒されて、いざ蓋を開ける。湯気と共にしっかりとした「エビ天」の「トッピング」が鮮やかに眼に飛び込んできた。さらには「ほうれん草」や「しいたけ」に「竹の子」なども入っていて、栄養価は抜群である。さらに、「そばうどん」にこだわりのある小生としては、「うどん」のこしの強さが問題。多くの具材をかき分けて、うどんを持ち上げると、煮込まれた中でもしっかりと長い麺が次から次へと出てくる。食べながら思わず微笑むような「鍋焼きうどん」に出会った。

 比較的、幼少の頃から蕎麦屋の昼食というのに慣れて育ってきた。家業の従業員とともに、蕎麦屋から出前を取って大勢で食べるという習慣があったからだ。その中で「鍋焼きうどん」というのも、思い出の中に刻まれたメニューの一つだ。その当時は、5〜6人前の出前を自転車に乗ったおばさんが、片手で大きなお盆を肩の上に載せて配達していたものだ。果たして途中の道では大丈夫なものかと、幼い心で心配すらしたものだ。昭和の下町ではこうした光景が普通であり、「ざるそば」を何段まで重ねて自転車に乗れるかなどという妙技が、普通の街中で展開されていたのである。

 そんな思い出に浸りながら「鍋焼きうどん」を堪能した。帰ろうと思い代金伝票を見ると「1050―」と記されている。メニューを見ると「鍋焼きうどん」は「900円」と表記。だが「上・鍋焼き」は「1050円」となっていた。「エビを載せますか?」という問いは「上鍋焼きはいかがですか?」と翻訳すべきという予想が当たった。まあ、「並」で150円相当の「エビ天」がなければ、こんな幸せな気持ちになれなかったのだから、安いものだと納得した。

 夕刻まで仕事をして帰路へ。夜の遅い時間帯にジムへ行くので、早めに食事がしたい。そこで駅前に出来た新しい定食屋へ。「ホッケ焼定食」を注文して待っていると、料理を運んできたバイトと思しき若い女性店員が、ホッケの皿を、無造作な音を立てて目の前に置いた。感覚的に「失礼しました」とでも言うのかと思っていると、全ての皿を置き終えて「ご注文は以上でお揃いですか」というマニュアル通りの言葉。こちらが携帯を見ていたので、どのようにでも構わないとでも思ったのか、何となく嫌気のさす態度であった。即座に、昼食の蕎麦屋のおばさんを思い出した。丁寧に熱く煮えた「鍋焼き」の盆を、いかにも低い物腰で卓において「ごゆっくりどうぞ」と優しい言葉を掛けていった。個人商店の蕎麦屋の居心地が圧勝と感じる瞬間であった。

 もうこのチェーン定食屋で食べるのはやめよう、と心で呟きながら、再び無造作に差し出された釣り銭とレシートを、同じ若い女性店員から受け取った。

 やや気分を害した夕食が予兆だったのか、帰宅すると期待外れな通知が2通。覚悟はしていても、心の中での整理が必要な時間が過ぎる。自分自身ではどうしようもないというやるせなさを、心の中で一つ一つ引き出しに仕舞い込んだり、過去のものとして葬り去ったりして。それから立ち上がるにはやはりジムのレッスンである。

 遅い時間の有酸素運動プログラム。「脂肪燃焼と体力強化に効果的ですよ!」とインストラクターの変わらない笑顔。身体を動かすことで、また新しい自分が手に入った。

 
 鍋焼きうどんは美味い!

 改めてそんなことに感激した1日。仕事中の昼食とはいえ、心がこもったような温かい1品に出会いたいものである。
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