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〆切にどう向き合うか?

2021-10-19
〆切をどう意識してどう行動するか?
早々に終わらせる?〆切厳守?まあいいか?
原稿催促など昭和にお馴染みの風景なども

昭和の映画・ドラマなどでは、作家さんの元に編集者が借金取りならぬ「原稿取り」に詰めて、あれこれ策を弄するという常套な場面があった。確かザ・ドリフターズにも、そんなコントがあったと記憶する。メールや郵便や宅配も今ほど便利に利用できない時代、「紙原稿」を直接手渡す重量や手触り感があっただろう。たいてい作家さんはその場合、編集者が家に来ていても原稿を書き続けているのが常だ。上手く筆が進まないと原稿用紙を丸めて投げるので、次第に部屋は原稿用紙のゴミだらけになる。400字詰原稿用紙ゆえ、書いていって気にくわなければ最初からやり直しとなる。これもまたワープロソフトを使用するのとは大きく違う面である。要は作家さんが特別な存在で、「〆切日」を設定しても一向に守らないことが社会的に慣例化している訳である。作家さんはある意味で世離れしており、社会性はなく自らの世界観から秀作を生み出すという観念がはびこっていたように思う。編集者側も「原稿を待てる」という社会的・時間的余裕があり、味のある名作を数多く生んだことだろう。故・井上ひさしさんなどは自ら「遅筆堂」と称し、原稿を仕上げるのに大変に時間がかかったのは有名である。

学部卒で教員になった時、定期試験の答案が出てくるとその場ですぐさま採点を始める1年先輩の先生がいた。僕は気になる設問の解答欄をまず楽しみに何クラス分か繰ったりして、ひとたび答案を引き出しに保管し、気持ちが向いてから採点を始めるタイプだった。同僚の先輩は定期テスト期間中に採点を終わらせ、成績〆切までかなりの余裕を残して成績を提出していた。僕は記述問題などの減点具合などをあれこれ考えるせいもあるが、〆切日になってようやく成績票を提出する。新卒当時はまだ手書き成績票に書き入れて担任に手渡しするという方式で、その後に担任は各教科の成績一覧表を「閻魔帳」上に手書きで作成していた。教員生活が進むにつれて、次第にパソコン入力で自動的に成績一覧表が作成されるようになった。仕事が与えられたら「すぐやる」か?「しばらく寝かせる」か?明らかに僕は新卒時には後者のタイプ。その後、諸々の機会に母の行動を観察すると、やはり何事も「しばらく置いて」やる生活習慣があることに気がついた。遺伝子なのか生育の段階でそう習慣化させられたのか、母親の言動の習慣が無意識に染み付いていることが他にもある。今でも僕は前項に記した作家さんほどではないにしても、「〆切日」ギリギリまで粘るタイプである。今回は「待つこと」を一つのテーマに新刊を著したが、初校の〆切日となる前日までやはりじっくり「待った」訳である。東京の出版社まで宅配のタイムサービスでやや高い値段を支払い、昨日の午後にようやく発送した。自分なりに校正の追い込みをかなり頑張れた納得感はある。だが時折、初任時の先輩の姿勢を思い出すことがある。少なくともメールや実務に関しては、初見で対応する習慣が必要な時代だ。誕生日プレゼントをした靴を母は2週間ほど寝かせ、「短歌オペラ公演」がある特別な日に下ろしていた。「日を選ぶ」思考もまた大切なこと。今回の自著にある「前向きと前のめりは大きく違う」という自らの文言に頷いたりしている。

原稿のやりとりも高速化した
だが性急に結果だけを求める社会でいいのだろうか?
人生の「スピード感」について、「待つこと」の大切さと天秤にかける日々だ。


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