固有名詞を活かすー宮崎大学短歌会9月歌会
2021-09-02
「雪の宿」「ウンディーネ」「ザッハトルテ」「吉田類」
その属性をいかに一首に活かせるか
9月になった。1日は「防災の日」、幼少の頃から「関東大震災」の惨状を聞かされ、非常食や備蓄の水なども用意する意識をあらためて考える日でもある。「関東」と名付けられているが、震源は神奈川県の小田原付近、相模湾に潜む震源から発し大都市東京を中心に襲った地震であった。我々が今も常に意識するのは「東日本」、その先に「阪神淡路」、さらには「中越」、地名が冠された「地震名」がこれほど羅列できるのはやはり地震列島であることを再認識する。地震名一つをとっても、リアルに同時代を体験したかどうかで当人の意識はかなり違う。「十年ひと昔」と云うように語り継いでいかねばなるまい。「関東大震災」は引き継がれている方かと思うが、それだけにさらに肥大化した東京を再び襲うと考えると恐怖だ。話は逸れたが、宮崎大学短歌会の歌会が開催された。前回から間隔の短い周期での開催となる。
今回は自由詠であったが、なぜか固有名詞のある歌が目立った。冒頭に記した四種の固有名詞、「雪の宿」はお煎餅の製品名、「ウンディーネ」は「水の精」でドイツの小説の名前でもある。「ザッハトルテ」はチョコレートケーキ、個人的に調べると「ザッハ」は考案者の名前で「トルテ」は円盤状のケーキのことでドイツ語由来のようだ。そして人名としての「吉田類」、『酒場放浪紀』と云う番組のファンなら言わずと知れたことになるが、年代層によっては馴染みが浅い。俵万智さんがかつてサザンオールスターズが40周年を迎えた2018年に『文藝春秋』の特集に寄稿し、『サラダ記念日』で詠んだサザンの短歌が今も活きているのは、サザンも『サラダ記念日』以降に日本中で知名度の高いバンドとして活躍し続けているからだ、と云う趣旨のことを記していた。著名人であっても何十年後の「賞味期限」の上で、短歌として読まれ続けることができるかは難しい。それほど短歌は「1300年の地平」の上で詠むという意識が求められ、ある意味で時代を刻むものと言えそうである。
「コロナ読み」も諸々に
時代を保存する若い言葉たち
刺激の多い濃密な時間
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