だれやみ文化大学・吉田類トークショー・国文祭芸文祭みやざき
2021-08-29
「酒縁社会」「酒場は学校」
「知らぬ地で今宵は俺も吉田類」
(吉田類さんご著書などから)
吉田類さんトークショー出演の当日、朝から宮崎はこれ以上ないほどの青空が広がった。人間社会は感染拡大に頭を痛めているが、自然は全開で爽快な顔を見せてくれる。「蔓延防止」によって酒類提供ができない宮崎市において、せめて最高の宮崎らしき空が類さんを迎えてくれた。控え室にご挨拶に伺うと丁重に「はじめまして」と言っていただいたが、「実は11年前・・・」と昨日の小欄に記した「出逢い」のことをお知らせした。この「再会」そのものがこの日のトークショーのテーマである。トークでも進行の伊藤一彦さんがそのような流れに話を差し向け、神保町 Bon Vivant を紹介することもできた。「お酒」の意義というのは「人をつなぐ」こと、類さんのご著書の言葉ならば「酒縁社会」ということだろう。よき酒によき人が集う、そこには各自の人生が淀んでいる。偶然の出逢いで個々の状況は違っても、酒を発酵させる際の「上澄み」がある意味で貴重なように、酒場で語ることで個々の精神がバランスを回復する。酒は外に淀みを発散させるとともに、自分の内面を見つめる(内観する)ことができる。これまで苦しい時ほど、そのような「酒縁」に助けられてきた僕の実感である。
「国文祭芸文祭みやざき」の企画であるゆえ、宮崎の魅力を語ることも大切。宮崎に来た頃、運転していた僕が横断歩道で停止して小学生を渡らせると、渡りきって振り向いて声を出して「ありがとうございました」という姿への感動。どんな場でも酒場でも人々は穏やかで心優しい、「和む」「融け合う」といった県民性をこの8年半でひしひしと感じてきた。食文化では、地鶏や肉類はもとより、海産物の美味しさに注目して発言した。特に日南での「かつお」「しび」の刺身の美味さは格別である。これも「酒縁」であるが、自宅近所に海産物を商う親友ができたことで、その豊かさ奥行きを知ったのである。「太刀魚」「伊勢海老」といった今まではあまり馴染みのなかった海産物の美味しさ、もちろん焼酎との適合も存分に味わった。伊藤さん曰く「『伊勢海老』という名前を変えられないものか?『青島海老』とか!」現にご本家『伊勢』に供給しているとも言われている。俵万智さんからは、野菜の素晴らしさが語られた。新鮮で安い野菜が身近に買えることはこの上ない幸せである。また吉田類さんの「1万円拾ったら」トークは爆笑だった。「四国四県」で「貯金する」「商売に使う」など各県民性があるらしいが、高知県は「もう1万円足して酒を呑む」ということらしい。さて宮崎県民は?とも思うが、僕は牧水の著名な「白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」の「染まずただよふ」というあたりに、宮崎県民の魅力があるという発言をした。空と海が「融け合う」ような、そしてあくまで純白の「白鳥」、強引だったり虚飾のない純朴と融合こそ宮崎が誇れる魅力である。トークしてこそ、宮崎の魅力があらためて深く自覚された。
類さんのお人柄
そして短詩系がつなぐ力
吉田類・伊藤一彦・俵万智に座を連ねられた幸福。
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