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ショートストップの栄冠ーTOKYO2020ソフトボール競技に寄せて

2021-07-28
ソフトボール日本代表優勝
もちろん投手・上野さんも偉大であるが
ショートストップ・渥美万奈さんの守備による栄冠

ソフトボール日本代表が、五輪決勝で米国を2対0で下し金メダルを獲得した。2008年北京大会でも決勝で米国を制しての優勝であったが、その後の2012ロンドン五輪・2016リオ五輪でソフトボールが正式種目ではなくなってしまい、日本のソフトボールは13年の時を待たねばならなくなった。その間、複雑な思いで現役投手を続けていたであろう上野由岐子投手は、2019年には試合で打球が顔面直撃などの不運にも見舞われたが、見事にこのTOKYO2020で13年前とは違うスタイルの投手として栄冠を再び掴んだ。いま「違うスタイル」と記したが、08年の際の速球(ライズ系)で抑え込むタイプではなく、コーナーに上手く制球しドロップ系やチェンジアップ系の緩急を上手く取り混ぜた「打たせて取る投球」スタイルの投手として円熟味を増したと言ったらよいだろう。昨晩の決勝も含めて、その「打たせて」を支えたのがショートストップ・渥美万奈さんの鉄壁で奇跡的な守備であった。僕自身が野球をしていた時にショートを守っていたこともあり、ソフトボールや野球では「ショートストップ」の守備こそが、チーム勝利の鍵を握ると考えている。二塁手とともに二遊間が強いチームでないと、真に勝利できるチームには仕上がらないのがソフトボールである。僕が高校教員として監督をしていた際も、まずはバッテリー、次に二遊間に能力の高い選手を起用するのが定石であった。

今回のTOKYO2020・ソフトボール競技の日本代表戦はことごとく生中継で観た。2対1で唯一敗戦した予選の米国戦を含めて、日本代表の強さの秘密は明らかに守備であった。本塁打が多く出た序盤の闘いではどうしても打撃面が話題となったが、ソフトボールは元来が「ディフェンシブ」な競技である。投手の手からボールが離れるまで走者は塁をリードできないとか、あの大きさのボールはそうそう遠くまで飛ぶものではない。「ソフト」という名称で勘違いしている人もい多いのだが、高校まではゴム製だが大学・社会人は革製で縫い目も高く硬式野球のボールと何ら変わらない硬さなのである。その上、塁間が短いので守備は一瞬のミスが許されない。TV中継の実況や映像がそこまで伝えないのだが、今回のMVPはショートストップ渥美さんだと僕は思う。三遊間の安打性を何気なく一塁で刺すこと幾度となく、バント処理後の二塁送球でアウトを取ったのち切り返しての一塁送球ダブルプレー、そして決勝で三塁手がグラブに当てて弾いた鋭い打球を好位置にバックアップしていたことで直接捕球し、すかさず飛び出した走者を二塁上でフォースアウトにしたダブルプレイ。あまりTV映像ではわからないが、いずれも打者や配給に応じた守備位置取りの妙が前提にある。名の如くこうした「ショートストップ」渥美さんの守備なくして日本代表の栄冠はなかったといってもよい。さらに言えば渥美さんは9番打者であるが、決勝の1点目の叩き付けた打球の内野安打、さらには予選リーグメキシコ戦でサヨナラ勝ちに導く走者3塁のエンドラン(これも叩いて高いバウンドの内野ゴロを打つ)など、渥美さんの打撃面の功績も忘れてはならない。力任せではない緻密かつ堅実な守備、我々日本人が世界で再び力を見せるにはどうしたらよいか?ソフトボール日本代表チームが、そのヒントを提示してくれたのである。

一球一球に根気をもって精密に守り切る
打球の可能性をデータと状況から判断し的確な位置どりを考える予知能力
米国発祥の競技を日本文化らしさを活かし新たな競技に仕立てた勝利と言ってもよいだろう。


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