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命に向き合うー日本周産期・新生児医学会学術集会特別講演

2021-07-12
生まれ出づる命に向き合う医学
ことばを通して人の命のあり様に向き合う短歌
「私の歌は、その時々の私の命の砕片である。」(若山牧水)

標記の学術集会が宮崎市内シーガイアコンベンションセンターで開催されており、初日の「特別講演1」に登壇することになった。これまで幾多の研究学会で発表はして来たが、医療系の学術集会というのは初めての経験であった。会場の規模もさることながら、受付からの流れや企業出展、発表用PCの申請・確認まで実に組織的・機能的な対応にいささか驚かされた。講演題は「若山牧水と日本の恋歌ー性愛と家族愛のまなざし」とした。東側をすべて海に向かっている宮崎県、日出づる光景に障害なく日常的に向き合える「ひむかの国」では、自ずと「生命の誕生」が象徴的に意識されることになる。宮崎が日本一の短歌県を目指しているのは、近現代短歌史を語るに欠かせない存在である若山牧水の生誕地であるからだ。「国文祭・芸文祭みやざき2020」のテーマの一つにも短歌がなっている。酒と旅の歌人と評されることが多い牧水、その死と生について概況を主治医が遺した資料で紹介した。死期が迫る中、主治医の許しもあって酒が与えられていたこと、また生誕の状況は医師である父が外出してしまった時に生家の縁側で「コトり」と音を立てて生まれたとされる姉の記述などについて語った。

人はこの世に生を受けたその時から母胎から離れ、「ひとり」で孤独な人生が始まる。そして、死にゆく際も「ひとり」である宿命を誰しもが背負っている。それゆえに生きている際に、誰かと恋をし寂しさから逃れ、性愛の関係を持つことで家族を築き人とつながって生きていく。しかし、恋をして性愛の関係に至るのはそう簡単な道ではない。牧水がそうであったが、叶わぬ恋に身悶え苦しみその坩堝に身を投じて足掻き続ける日々がある。恋は苦しいゆえにまた、絶頂の恍惚や陶酔が生きる上で掛け替えのない時となる。若かりし頃に熱烈な恋をした5年間によって、牧水は「命そのもの」である短歌の表現力が磨かれたのだ。古典和歌からして、「あやめも知らぬ恋」(理性をはずれた恋)が大きなテーマとなる。それは現代の桑田佳祐さんの楽曲にも表出し人類普遍のテーマかもしれない。その後、現代短歌に表現された「性愛」をダイジェストでよむ、次第に現代の若き世代の特徴に言及する。「恋愛忌避」「晩婚化」など日本社会が抱え込んだ問題は根深い。医療と文学と教育が手を携えて解決していかねばならない課題は多い。最後に宮崎在住の著名歌人・俵万智さんのお子さんの誕生を喜び、母親としての愛情深いこころを短歌によみ、牧水もまた4人の子どもたちにとって素晴らしい父親であったことを紹介し講演を終えた。

新刊書が近刊されることにも触れ
様々な分野の人々に短歌を考えてもらいたいという願いを込めて
「命に向き合う」みやざきでの学問・教育を追究していきたい。


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