愛ってなんですか?古典から考えるために
2021-07-09
「おくと見るほどぞはかなきともすれば風に乱るる萩の上露」(紫の上)「ややもせば消えをあらそふ露の世に後れ先だつほど経ずもがな」(光源氏)
辞世の唱和をいかに読み取るか?
前期講義もあと数回を残すのみ、内容的にも佳境に入るものが多い。2年生対象の『源氏物語』を扱う科目は、光源氏の最愛の妻・紫の上が死期を間近に察し自らの命が長くないと悟った心を歌に詠み、源氏や明石の中宮がそれに唱和するという場面を読んだ。紫の上と光源氏の和歌は冒頭に記した通りだが、その表現から相互の愛情がどのように読み取れるか?という点についてグループごとに対話をして全体共有するという方法で講義を進めた。辞世の歌にしても光源氏への気遣い、急な死で光源氏が驚き苦しまないような配慮、などという読みもあれば、やはり二人は最期にいたり深い愛を確かめ合ったという読みをするグループもあった。普遍的に人の愛とは何だろう?ということを必然的に考える対話ができた。物語の中では光源氏の様々な女性遍歴が描かれるが、社会的には「正妻格」とされて、その「格」が付くことにはこれまでの講義対話でも深く考えて来た内容である。夫妻の「愛」とは何であろうか?
昨今の若者において「恋愛忌避」や「晩婚化」の傾向が指摘されて久しい。その結果としての「少子化」の問題はこの国の社会が正常に歩めるかどうか?に関わる大きな問題である。社会の各所で対策は講じられていようが、政治から示されるものは旧態な体質を背負い根本的な解決に寄与するには望みがあまりに薄い。たぶん新型コロナの感染対策においても折に若者が問題となるのは、政治・社会と若い世代との意識の乖離があるように思えてならない。「学校」一つ見ても組織内において大量退職が続く50代と20代の新任教員との感覚の違いは甚だしいように思うことがある。「最近の若者は・・・」という以前に「最近の中高年は・・・」と自らを見つめた方がいい。学生らと接していて思うのだが、「深く考えている若者」も少なくないのだ。その証拠に多くの官僚腐敗体質が露見する中で、官僚を志望する若者の率は年々減少していると聞く。若者たちを臆病に去勢してしまう原因は何だろう?学習も受験も習い事もボランティアも強引に大人の勝手で押し付けられ、押し付けた当事者から「主体的に」などと訓示が垂れ流されると必然的に若者のやる気を削いでいるのではないだろうか?
若者の生きた声を聴こう!
ゆえに短歌があると僕は思う。
学生たちの心に十分に耳を傾ける人でありたい。
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