先生は多彩に夢を持とう
2021-06-28
かつて「学者・医者・易者・役者・達者」いま実務に追われて趣味もできないなんて・・・
いや、宮崎には多彩な先生がいるのです
僕が大学受験を志していた頃、城山三郎の小説『今日は再び来たらず』を読むとある大手予備校に取材したもので、冒頭に記したような先生の条件として「五者」が記されていた。学問研究に長け(学者)、受験生を的確に診断し(医者)、その未来を占い(易者)、教材に登場する様々な人物を演じられ(役者)、何より受験は日々が勝負ゆえに休まないように身体が丈夫でなければならない(達者)という五条件が揃っている先生が理想だとあった。当時、僕自身が大変にお世話になったラジオ講座で全国的に有名な先生も、いつもこの五条件を念頭に講義をしていると常々語っていた。先生は多彩でなければならない、その時から僕自身もこれを信条に先生をして来たように思う。言い換えれば先生が夢を持つことである。ところが昨今の小中高の学校の現状は、実務的な忙しさばかりに追われて、なかなか先生が夢に向かって個性的な活動をしづらくなっているように思う。偏狭な料簡で先生の個性的な才能を感じさせることができない授業では、学ぶ側の豊かな心も育たないように思う。
劇団ゼロQリーディング公演・第9回みやざき岡田心平演劇賞戯曲部門受賞作品「風〜つるっとじゅわっと消せない想い」を観覧するために、照葉樹林の吊橋で有名な綾町まで出向いた。街の格式ある蕎麦屋さんの店舗を活用した舞台で同公演が開催された。劇団代表の前田晶子さんとも朗読関連で交流があり、彼女のラジオ番組に出演させてもらったこともある。また演出の永山智行さん(劇団こふく劇場主宰)とは、小学校への演劇・朗読アウトリーチで何度かご一緒したことがある関係だ。そして今回の公演の脚本を執筆した藤崎正二さんは、高校の先生として活躍しつつ市内で「ポエトリーリーディング(詩の朗読)」を毎月開き、牧水短歌甲子園に出場する高校生らを育て、自ら短歌甲子園の司会も務め、「詩のボクシング」を始め詩作などの文芸に多彩な才能を発揮している先生である。今回の「戯曲(脚本)」も高校の風景に取材し、高校生らがコロナ禍の現実の中でいかにコトバに向き合うかがリアルに描かれた秀作で前述した岡田心平賞を受賞した作品であった。みやざきの高校生たちが豊かな学びをするためにも、藤崎先生のような方の活動は実に貴重である。短歌を始めとする詩歌の創作をはじめ、朗読や演劇などの表現活動が連携してこそ豊かなコトバが活性化するみやざきになる。かつて高校の先生であった僕自身が、このみやざきではどんな夢を追うべきなのか?それを藤崎先生の姿を見ていて、あらためて考え直す契機となった公演であった。
出演する役者さんに僕の講義をかつて受講した学生さんも
教育学部での学びは多彩であるべきだろう
先生に夢がなくてどうして夢のある子どもたちを育てられるのであろうか?
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