課外単位「恋愛」必修科目
2021-06-16
若き日に自らを否定される経験を「お勉強」だけで人は成長しない
色恋沙汰の効用を考える
前期も中盤折り返しを過ぎ、講義も終盤へ向けて変化が欲しい頃となった。全学部生が対象の「日本の恋歌ー和歌短歌と歌謡曲」では、短歌の創作主体に手紙を書いたり、恋歌に啓発されて自分自身へ向けて手紙を書くなどの課題から、短歌創作をしてその物語を添えるという内容として佳境への道を歩む。この講義を担当していて思うのは、単に言葉の力や文章作成能力など「お勉強」としての学びと同時に、個々の学生が人生で恋愛をどう考えるか?という大きなテーマ性が大切だということだ。現状のこの国の若者の特徴として、「恋愛忌避・晩婚化」の問題は極めて深刻であると考えるゆえである。「傷つきたくない」という保身への思いが先行する背景に、誤った過度な「批判社会」という構図も見逃せない。実習や就職後3年以内の環境に耐えられず、離脱する若者が目立つというのも、こうした心性に起因するのだろう。正面から真っ向な否定を受けることで「傷つく」ことが、心の筋トレとなって逞しく生きられる可能性があることを知るべきだ。
当該科目の学生課題を読んでいると、ついつい自らの学生時代の恋愛を思い出すことが多い。まさに正面から否定されたり、理不尽にも否定された苦い経験、それとともに「こうしておけばよかった」という取り返しようのない後悔が記憶の襞を刺激する。だがその「傷ついた」経験があればこそ、社交性も気遣いも衣類のセンスも優しさも身につけられたのではないかと思う。その「別れてとおきさまざまな人」のうちにはもちろん「逃げた」経験もない訳ではない。そのような意味ではもっともっと「恋愛」を若いうちに勉強しておいた方がよかったという思いが、どうしても心のどこかで蠢いている。そう!「恋愛」こそが「課外必修単位」なのではないか、という思いを強くするのである。そこで試されるのは理屈の課題レポートではない、相手の心と向き合って真に伝わる言葉を学ぶ貴重な機会となる。古代にあった「歌垣」の場もしかり、欧米の高校卒業時の社会的風習など、「恋愛」を促進する社会的な装置がやはり必要なのではないか?「批判」ばかりとか「保身」のみでは生きられない現実が、突きつけられる体験を味わうのが若者にとって必須であろう。
「面影につと現れて去る人のかくあまた人われに住めるか」
(窪田章一郎『六月の海』より)
短歌でも音楽でも「恋歌」から多くを学びたい。
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