空(ゼロ)の発見ー創発読書会Vol7
2021-06-12
車輪が回転するのは中心に「空」な部分があるから「無為」にこそ大きな力が宿っている
端役が人と人とを繋ぎ社会が動く
朝から講義の準備、国文祭・芸文祭みやざき2020の附属図書館連携企画の打ち合わせ、講義、学部内での打ち合わせ、と隙間のない1日を過ごす。その隙間時間には、メール返信など「やるべきこと」は絶えない。常に「走ってる」ような状態であり、「自己」という「車輪」はどのように回っているものかと思う。「回転」し続ければ摩擦が生じ、やがて熱を帯び摩滅していくことになるのだろうか?『老子』に「三十輻一轂を共にす」のことばがある。『故事俗言ことわざ大辞典』によれば、「車輪は三〇本の矢が一つの轂(こしき)に集まり、轂は中心に穴があり、空であることによって回転できることをいう」とある。物事が回るためには実は「空(ゼロ)」なる部分が何よりも重要であり、目に見える「三十輻」はその車輪全体の均衡を相互に支えているということになる。生きる上でも「空」の時間を持たないと、うまく回っていくことはできないということになるだろう。
『老子』の話題は創発読書会で議論して再考したものだ。夕刻からオンラインで開催された読書会に参加して、ようやく「自己」を「空」にすることができたように思った。引き続き、河合隼雄『神話と日本人の心』を読んでいるが、「中空均衡構造」に関する記述の続きである。日本の場合は欧米に比べて、「調整」を旨とする長が組織の上に立つことが多いというのも興味が惹かれた。欧米からすると「長」には適さない人物が、なぜか「長」たる位置に座ることが少なくない。「調整」ならばまだ良心的な物言いだが、ここ最近は「忖度」にすっかり変化してしまった。リーダーシップなき新型コロナ感染対応を我々は目の当たりにして欧米諸国を羨みながらも、変質し歪んでしまった「中空」に身を委ねるしかない混濁の中にいる。明治以降の西洋文化の摂取・受容への前向きな姿勢の賞味期限も切れ、世界でも有数の経済大国であるという「過去の夢」だけを抱え込みながら、均衡なき歪んだ「車輪」がギクシャクしながら新型コロナの「悪路」を激しく揺れながら走っているのだ。そこに「TOKYO2020」という荷物を過剰積載を承知の上で、同じ「忖度」構造の中で車輪の上に載せようとしている。「歪み」ならばまだよいが、「三十輻」が折れ始め最後には「轂」の「空」を喪失した時、回転しない車輪になりはしないか?などと最悪の想定も考えておかねばならないのだろうか。
「空(ゼロ)」の存在を発見すること
「自然」の摂理に通ずる動きを歪めてはならない
せめて読書会の議論で意識化し、僕ら自身が均衡ある健全な「空」を保つべきか。
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