あらためて自然
2021-05-28
川は流れる方向を定めていない諸条件・諸要素の影響を受けて湾曲する
逆らわず自然に委ねるが、計り知れぬ力を持つ
近現代という時代は「自然」に逆らい、人間がその欲望のままにあらゆるものを可能にしようとして来た歴史でもある。大空を速く楽に飛びたいという欲望も、遠くにいる人と簡単に情報交換をしたいという欲望も、季節や諸条件に左右されない食事を簡単に手に入れる欲望もほとんど叶えて来たわけである。その結果、「速さ」を重んじ天候に左右されない「一定」を当然だと思い、社会的な時間を制御しているつもりが「拘束」されるという自己矛盾の中に身を置くことになった。あらゆることが「自然」に逆らう行為であるにもかかわらず、自覚なき倨傲の中で自然の逆襲にも気づかないのかもしれない。
人類の歴史は「感染症との闘い」であると、公衆衛生等の研究者は云う。この100年間、天然痘の撲滅など人類はその闘いに終止符が打てるはずという幻想に酔って来た。我々が身近に接していた麻疹やインフルエンザは医療で克服でき、時代とともに海外渡航の際にも諸々の予防注射をしないでもよい時代だと思い込んで来た。だが、それそのものが大きく「自然」に逆らうものであったことを誰しもが忘れていた。危機を唱え予防を訴える学問や表現を歪んだものと切り捨て、人権を軽視し差別が横行する。情報を制御することで強引な力を内輪として護り、周囲と敵対して自らの正当性のみに目を向けさせようとする。この「反自然」の態度に引き摺られ、己の脆弱さに目を背けている。新型コロナはそんな近現代の傲慢を国ごとに炙り出し、個々の向き合い方を露わにしたと言えそうである。
川が一直線だと人は生きる土地を失う
多様な抵抗や摩擦もあって曲がりくねるのが自然
ああ、川の流れのように。
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