緊迫する入国の経験を思い出しつつ
2021-05-07
国境を越えるという意識半島大陸との交渉の古代から西洋文化の伝来へ
同様に「島国」である英国国境での経験から
20代の頃に欧州縦断、約2週間の旅をしたことがある。お金もないので一番安かった「モスクワ経由」の航空機でシベリア上空を飛び、冬だったので窓際の席は寒い外気が入ってくるような旧ソ連製の旅客機だったように記憶する。モスクワで初めて所謂「東側」の国にトランジットで宿泊するが、空港からのバス内でパスポートの回収があり、命を預けるような思いで自動小銃を持った兵士に赤い表紙を手渡した。雪深き寂しい敷地にある収容所とも呼びたくなるようなトランジットホテルは部屋割りも適当で、幸い早い者勝ちを知人から助言されていた僕は、ともにした友人と二人部屋を強引に確保した。しかし、同乗していた日本人の中には、ターバンを巻く人と同室になる者もいて、まさに「世界」を体験できる機会でもあった。翌朝、一番の懸念であったパスポートは返却され、机上がまったく片付けられていないレストランが目立つ空港から、スイスはチューリッヒへと再び飛び立つことができた。
チューリッヒから電車でスイス・ジュネーブまで、レマン湖を車窓に見ながらドイツ語圏からフランス語圏になるのが、駅の表示や乗客の会話から実感できた。ジュネーブに程近い国境を接するフランスにある知人の家に滞在しクリスマスイブを迎え、その後はユーレイルパス(欧州各国で一等車両が利用できる、今風に言えばサブスク周遊乗車券)を利用して欧州縦断列車の旅へ。イタリアへは電車内で車掌にパスポートを見せるか見せないか、と思うほど簡単に国境を越えた。その一方で北に向かい、フランスからドーバー海峡をホーバークラフトで渡った後の英国の入国審査では、係官が執拗に僕に尋問をくり返した。当時、僕が勤務していた学校の英国校がロンドン郊外にあって、同僚が二人出向していた寮に転がり込む予定であった。そのため「滞在先」を「学校の住所」にしたことが、どうやら「不法就労者」だと疑われたようだった。尋問は約20分ほどに及び、入国審査ゲートの僕の後ろには長蛇の列ができた。最後には1週間後に帰国する航空券を見せることで、ようやく入国許可が下りたという体験であった。あれから30年以上が経過した。髭面革ジャンという僕の風貌を英国の入国審査官に疑われた経験は、同じ「島国」の住民として意識を拓く体験になったのだった。
30年間でさらに世界は拓けた
されど内向きになってしまった島国
OECD加盟国で一番ワクチン接種等で劣るのも、それなりの理由があるのだろう。
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