得体の知れないものの面白さー創発読書会Vol.2
2021-03-10
自然科学が世界を説明し始める「迷信」は排除され韻律は厳密に規則となる
そこに「退屈」が生じ再び「聖なるもの」を希求する
附属図書館創発読書会の第2回目を、オンライン開催した。休暇中とあって学生の参加は少なかったが、各自が問題意識を持って興味深い対話が展開された。前回同様に「ゲーテらしきもの」が記したとされる「自然ー断章」を読んだが、難解な文章ゆえに様々な解釈を許容する。短歌がまさにそうなのだが、「説明的」で「一様な解釈」しか為されないものは退屈し面白味に欠ける。だが現在の社会情勢は、「わかりやすいもの」を求めて「論理」などという語を翳して安易な「説明」を頽廃的に求める傾向が強い。世界で其処でしか出せない「手作り料理」よりも、米国に深い関係のある国には必ずあるハンバーガーチェーンの人造的で簡単には腐りそうにない化学薬品的な味が受け入れられ、コロナ禍でも甚大に収益を伸ばしている。少なくとも僕は、穏やかな「人」が材料をその「眼」で吟味し熟練した「腕」で調理する姿が見える店が好きだ。だがそうした店に最初に入るのは、「賭け」のような思いっきりも必要となる。
僕らは誰しもそれぞれの社会に向き合う際に、「仮面」を被りその役割を演じている。「学生」「教員」「妻」「夫」「子ども」「母」「隣人」など、1日に幾つの「仮面」を演じるだろう。それぞれが妙に「不自然」を自覚してしまうこともある。だが「デーモン小暮閣下」がそうであるように、「不自然」を貫き通せば「自然」となる。彼があの塗り顔で大相撲の精緻な解説をしていることに、少なくとも僕は微塵も違和感は覚えない。また「規則性」とか「行動の韻律」が「儀礼」のような意味合いを持つまで貫き通され、驚愕の結果が伴うと神聖化する例を僕らは好む。イチローが打席で投手に向かうまでのストレッチを伴い祈りの韻律を刻む一連の動き、長嶋茂雄の躍動する三塁守備や打席での小刻みな微動、王貞治の手袋なき握った手を口に当てバットを握るまでの動作から一本足での静止、いずれも当初は「不自然」であったかもしれないが、実に「自然」となり多くの人々を惹き付けた「儀式」であり「聖なるもの」なのだ。もしや現在のプロ野球は、ハンバーガーのように判で押したような選手ばかりにはなっていないだろうか。
文学・哲学でいかに現在の世相を切り取るか
読書会の多分野の参加者による自由な対話が生むもの
「答え」など安易な納得に着地しない得体の知れなさの中に・・・
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